バイタルを制する者は臨床を制す

 

 

病院で看護師として働いていると、「バイタル」という言葉を頻繁に耳にします。

 

「バイタルって何かわかりますか?」と訪ねると、ほとんどの人は「なんとなく知っている」と答えるでしょう。

 

しかし、専門職である看護師は「なんとなく知っている」だけれはだめです。シンプルで初歩的な医療技術のようにみえるバイタルチェックですが、実は非常に奥が深く、バイタル一つで得ることの出来る情報量には目を見張るものがあるのです。

 

例えば、発熱を例に出します。実は発熱にはさまざまな型があります。「高熱が持続する」「高熱と平熱を繰り返す」「一定のサイクルで高熱が出る」など、一口に発熱といっても多くのパターンがあるのです。

 

そして、どのような型で発熱しているかによって、診断も大幅に変わってきます。逆に言えば、発熱のサイクルを正確に把握することによって病気の診断すら可能になるのです。

 

このことは、「バイタルサインを正確にとれないと診断名すら変わってしまう可能性がある」という事実も指しています。

 

本当は怖い「バイタルチェック」

 

看護師にとってのバイタルチェックは、日常的な業務です。一般病棟でも1人の患者さんにつき最低1回はバイタルを測定しています。さらに、救急領域においては、1時間に1回など頻繁になります。

 

バイタルチェックは日常的な業務であるがゆえに、「なんとなく緊張感も無くバイタルを測定して終わり」のようなことをしている人もいるかと思いますが、実はこれは大変危険なことなのです。

 

管理人(=私)自身、看護師勤務をしていたときにバイタル測定で大失敗してしまったことがあります。

 

ある日、免疫不全の患者さんを受け持ちました。バイタルチェックの時間になったので熱を測ってみると、38.6℃ありました。「これは大変」と急いで担当医に報告して抗生剤が開始されたのですが、開始直後に計り直してみると熱が36.7℃に下がっていたのです。

 

「あれ?」と思い再び測り直すと、やはり平熱でした。つまり、私の体温の測り方がおかしかったために、誤ったアセスメントをしてしまったのです。

 

私のバイタルチェックが甘かったために、患者さんに必要の無い抗生剤が投与されてしまいました。

 

「そんな初歩的な間違い、自分はするわけない」と思う人もいるかもしれませんが、実はそんなことはありません。

 

私は看護師時代に新人指導担当をしていましたが、新卒・経験者問わず、バイタルの測り間違いをしている人があまりにも多くて驚きました。ほとんど全員が、正しいバイタルチェックではなく「自己流」で「なんとなく」のバイタル測定をしていたのです。

 

例えば血圧を測るとき、マンシェットの巻き方が緩いままやっている人がいました。これでは血圧値が20〜30もずれる可能性があります。

 

また、不整脈の患者さんの脈拍測定を通常の人と同じように10秒間で行っている人もいました。たった10秒間の脈拍測定では、不整脈出現の有無まで判断できません。

 

また、バイタルを測定したまではいいものの、そのあとのアセスメントが出来ずに重要な兆候を放置している人もたくさんいました。

 

例えば、免疫不全の人の熱が37.3℃だったときです。元気な人だと「微熱ですね」の一言で終わるところですが、免疫不全の人ではそうはいきません。すぐに抗生剤投与を始めなくては、敗血症になってしまうかもしれません。

 

知識がないというのは非常に怖いことです。

 

間違った方法で患者さんのバイタルを測定し、重要な徴候を見逃してしまっていたらどうなるでしょう。患者さんの命に関わってくることです。

 

バイタルを測定したはいいものの、それが正常値か異常値かわからないまま放置した結果、患者さんが急変してしまったらどうなるでしょう。これは、専門職としての責任問題に大きく関わってきます。

 

正確にバイタルサインを測定できるか、そしてそれを正確にアセスメントできるかどうかという能力は、患者さんの大切な命に直接関わってくる非常に重要なことなのです。

 

そうはいっても、今まで「バイタルサインについて正しい知識を学んできていない」という人も多いでしょう。

 

そこで当サイトでは、誰でもバイタルサインをマスターするための知識を、わかりやすく解説していきます。

 

「バイタル測定方法」などの技術的な話だけでなく、一つ一つのバイタルの基礎から解説しているので、まずはこれを読んでしっかりと基本を身につけてください。

 

基本さえ身につけば、それを応用することは難しくありません。

 

正しい知識を身につけ、自信をもってバイタルサインの測定をできるようになりましょう。

 

そして、自分の頭で考えながら動くことのできる、自立したナースになってください。

 

 

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