呼吸の3要素
酸素と二酸化炭素を交換する「呼吸」を成り立たせるためには、呼吸運動によって空気を肺胞へと運ぶ「換気」、肺胞と毛細血管との間の「拡散」、ヘモグロビンと結合して酸素を体中に運んでゆく「血流」の3つの要素が必要です。
ここでは、換気と拡散について説明します。
換気
換気とは、呼吸運動によって空気を肺胞へと運ぶ働きのことです。この説明からもわかるように、換気をするには「呼吸運動」が欠かせません。それではどのような呼吸運動が行われているのかみていきましょう。
<呼吸運動の仕組み>
肺は、自分自身では動くことのできない臓器です。そのため、呼吸が行われるためには、筋肉(呼吸筋)の働きと、それに伴う胸腔内の圧力の変化が起こることが必要になります。
呼吸運動の際に活躍してくれる筋肉は、主に肋間筋(肋骨を動かす筋肉)と、胸腔と腹腔を隔てる横隔膜があります。ちなみに、主に肋骨筋が働く呼吸を胸式呼吸、主に横隔膜が働く呼吸を腹式呼吸といいます。
私たちが息を吸うとき、横隔膜は緊張して収縮し、押し下げられます。横隔膜が収縮して押し下げられることにより、胸腔内のスペースは広くなり、それによって胸腔内の陰圧(空気を引っ張る力)が強くなってゆき、結果的に肺が拡張するのです。この働きで、私たちは空気を吸い込むことができます。息を吸い込むためには、呼吸筋がアクションを起こさなくてはいけないのですね。
しかしそれとは逆に、息を吐き出すときは、呼吸筋はアクションを起こす必要はありません。息を吸うために緊張して収縮した横隔膜が、緊張が解けてゆるむことで、自動的に胸腔内のスペースはもとに戻り、それによって胸腔内の陰圧も弱くなり、肺がしぼむことで吸った息が吐きだされるのです。ちなみに肺や胸郭には、「弾性」と呼ばれる、元の状態に戻ろうとする性質があります。
拡散
拡散とは、肺胞におけるガス交換のことです。
ガスは、「圧の高いほう→低いほう」 という方向に流れます。毛細血管における酸素分圧は約 40mmHg で、肺胞の酸素分圧は約 100mmHg となっています。そのため、肺胞→毛細血管へと酸素ガスは流れていくのです。
ガスが拡散しやすい状況は、以下の4点です。
@分圧の差が大きい
A組織面積が大きい(広い範囲で拡散が行われる)
Bガスの溶解度が大きい(ガスがたくさん溶けている)
C分子量が小さい(ガスの粒が小さい)
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