熱放散の3パターン

 

たびたび出てきている「熱放散」。熱放散とは、熱を体の外に放出することです。熱を体の外に放出する方法には、全部で3つのパターンがあります。

 

@輻射(ふくしゃ)

輻射とは、「物体が電磁波を放出すること」との意味があります。これを見たあなたは、「人間が電磁波を放出?はて?」と思うかもしれません。

 

実は私たちの体からは、絶えず電磁波が放出されているのです。この電磁波の正体は「赤外線」です。
※赤外線:目で見ることのできない電磁波。人の体に手のひらを近づけるとほんのりと温かいのは、赤外線が出ているため。

 

つまり、私たちは常にほんのりと熱を放出しているのです。これが輻射です。
輻射によって体から放散される熱は、全放散量の60%にもなります。半分以上が、輻射によって放出されているのですね。

 

A伝導・対流

伝導とは、「熱または電気が物体内を移動する現象」との意味があります。つまり伝導とは、言葉通り「熱の移動」のことです。
伝導は、主に、体に接触している物体に熱が移動していきます。たとえば、椅子に座っていて立ち上がると、座っていた部分がほんのり温かいことがありますよね。これが、伝導によって移動した熱です。

 

対流とは、簡単に言うと「気体や液体などに、空気の流れが生じること」です。この言葉だけを聞くと、一見人間の熱放散とは関係なさそうですが、人間の体表近くの空気の流れを考えるうえでこの「対流」は重要な要素をもっています。

 

気体は、温度の高い部分は上昇し、温度の低い部分は下降するという性質を持っています。人間の熱放散で考えると、伝導によって温められた体表面近くの空気は上昇していき、冷たい空気が下降してきて体表面に集まってくるという流れになっているのです。
この流れからわかるように、人間の体表面近くの空気は常に循環しています。これにより、わたしたちは伝導を持続させることができる、すなわち熱放散をし続けることができるのです。

 

B蒸発

蒸発とは、「液体から気化が起きる現象」との意味があります。
※気化:液体が気体に変わること。

 

つまり、わたしたちの体の水分が気体に変わる現象のことです。体の中でどの部分から水分が奪われるのかというと、それは皮膚や気道です。皮膚や気道から出た水分が蒸発するときに、同時に体から熱を奪っていくことで、熱放散が行われているのです。
蒸発による熱放散には、発汗不感蒸泄があります。

 

発汗とは、汗をかくことです。汗が蒸発し、気体になるときに発生する気化熱が、体の熱を奪っていきます。

 

不感蒸泄とは、汗以外の水分の蒸発のことです。この「汗以外の水分」が具体的に何を指すかというと、皮膚や呼気からの水分です。(皮膚からの蒸発のみを指す場合もあります)。不感蒸泄による水分の蒸発は、周辺環境等の条件により大きく変動しますが、常温安静時にはおよそ1時間で50mlとなります。

 

 

 


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