血圧の異常:低血圧

 

続いては、低血圧についてみていきましょう。みなさんは、「低血圧」と聞くと、いくつ以下が低血圧とよばれるかご存知ですか?
実は、はっきりと基準値が決まっている高血圧とは違い、低血圧には、WHOで定められている一定の基準はありません。一般的には、収縮期血圧(最大血圧)が100mmHg以下の場合、低血圧といわれています。しかし、収縮期血圧が100mmHg以下になることは、健康な人でもよくあります。入浴後や睡眠時などです。そのため、収縮期血圧が100mmHg以下でかつ立ちくらみやめまいなどの自覚症状がある場合に、低血圧と診断されます。

 

低血圧の原因

低血圧には、大きく分けて3つの原因があります。
1つ目は、明らかな原因がない本態性低血圧
2つ目は、体の中に何かしらの疾患があり、それが原因で低血圧が起こる症候性低血圧
そして3つ目は、急に立ち上がることで低血圧となってしまう起立性低血圧です。

 

本態性低血圧

安静時に血圧測定をしたときに収縮期血圧が100mmHg以下であり、低血圧の原因となる病気が明らかでない場合、本態性低血圧といわれます。全身倦怠感、肩こり、不眠、寝起きの悪さなどの自覚症状があって発見されることもありますが、たいていは検診で測った時にたまたま発見されることが多いです。また、本態性低血圧では、体位(立位でのみ血圧が低下するなど)や、生理現象(排泄、咳など)とは関係なく低血圧がみられます。

 

本態性低血圧では特に治療の必要はありません。血圧が低いだけで、ほかの臓器に重篤な障害を引き起こす可能性などはないからです。しかし、患者さんの自覚症状の訴えが強い時や不定愁訴の訴えがあるときなどは、精神療法や生活指導などを行い、それでも改善しない場合には薬物療法を行うこともあります。

 

症候性低血圧

症候性低血圧は、何か病気があってそれが原因で低血圧が起きている状態です。
原因としては、以下のような疾患が考えられます。
・心疾患
心臓疾患に伴う新機能の低下、不整脈 等
・薬剤性
血管拡張薬などの薬物投与、薬物中毒
・自律神経系
自律神経(特に交感神経)の障害
・循環血液量の減少
血液、血漿、水分、電解質の喪失

 

症候性低血圧では、原因となる疾患が何であるかによって症状の出方が異なります。
原因疾患の治療が適切に行われることで、低血圧症状の改善がみられます。

 

 

 

起立性低血圧については、次のページで丁寧に説明していきます。


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