体温の測定方法と、やってしまいがちなミス



人間の5つのバイタルサインである「体温、呼吸、脈拍、血圧、意識」のなかで、最も日常的に測定されるのが「体温」です。

体温は、医療関係者ではなくても測ることが可能です。そのため、「体温測定なんて楽勝」「今更勉強するまでもない」と思う人も多いでしょう。

しかし、そのようなことはありません。実はいくつかの注意点を知っていないと、、体温は2、3℃余裕で変動してしまうのです。素人であれば「測り方が悪かったかな」で済むかもしれませんが、専門職である看護師の場合、測り方のミスでは済まされません。

最悪の場合、患者さんに不要な抗生剤が投与されるかもしれません。また、逆に治療開始が遅れることもあります。これは、とても怖いことです。

意外と奥深い体温の測定方法について、しっかりと学んでいきましょう。

体温の測定部位


「体温」とは、体の芯の温度である「深部温度」のことだと定義されています。

しかし現実的には、毎回「深部温度を測定する」ことは不可能です。そのため臨床においては、深部温度を測定する代わりに「口腔温」「腋窩温」「直腸温」「鼓膜温」のいずれかを測定することになっています。

これからそれぞれの測定方法や注意点について説明します。

書かれているのは基礎的なことがほとんどです。しかし、「何も考えずに測定しておかしな数値になってしまった」というのは臨床で起こりがちなことなので、しっかりとイメージしながら確認してください。

腋窩(えきか)温


最もポピュラーな体温の測定場所が、腋窩になります。ちなみに腋窩とは「脇の下」のことです。

なぜ腋窩温が最も頻繁に測定されるかというと、他の箇所で測定するのと比べ最も安全性が高く、患者さんへの負担が少ないからです。

それでは、腋窩温を測定する上での注意点についてお伝えします。

測定前は、食事や激しい運動を避ける。また、外出直後に測定しない

入院中の患者さんで激しい運動を行う人はほぼいないと思います。しかし意外とやってしまうのが、食後や外出後の体温測定です。

体温には「行動差」と呼ばれるものがあります。これは、同じ人であっても「どのような行動をしたか」によって体温が若干変動することです。

「行動差」があることによって、運動・食後や外出直後に体温を測定すると、平熱よりも高く測定されてしまうことがあります。そのため、食事・運動・外出後は、30分あけてから測定しましょう。

環境の調整

患者さんが掛け物をかけすぎて汗をかいていたり、薄着過ぎて寒がっていたりしたら、正確な体温を測ることはできません。今の環境が患者さんにとって適温であるかも確認しましょう。

特に小さな子どもは代謝が盛んであり、腋窩に汗をかいていることが多いです。そのため、汗をかいていないか確認してから測定する必要があります。

汗をかいている状態で測定すると、本来の値より低く測定されてしまいます。

これは、体温計が汗によって遮られてしまい、皮膚と密着させることができないためです。また、汗が蒸発するときに熱を奪ってしまうためという理由もあります。

口腔温


口腔温は、主に女性が基礎体温を測定するときに選択されます。

なぜ基礎体温を測るときに腋窩温でなく口腔温が選ばれるのかというと、「口腔温のほうが外気とふれにくく、正確に測ることができる」「腋窩温よりも深部温度に近いので、より正確な数値を把握できる」という理由からです。

特に基礎体温は、体温の細かい変化の情報が必要とされます。

通常であれば「36.5℃」という情報があればいいものの、基礎体温の場合は「36.55℃」と小数点以下2ケタまでの情報が必要です。理由は、基礎体温の変化は1℃未満という繊細な変化だからです。

このように繊細な情報を得るためには、より正確に測定されなくてはいけないのです。

それでは口腔温を測定する上での注意点をお伝えします。

測定前は、冷たいものや熱いものの摂取を避ける

口腔温は、口の中の温度を測るものです。そのため、冷たいものや熱いものを摂取すると、口腔温が大幅に変わってしまいます。

測定前の10分は、飲食物を取らないようにしましょう。

また、歯磨きも避けなくてはいけません。

体温計を挿入させる部位は、舌下中央部付近

「舌下中央部」とは、「舌の裏の真ん中」のことです。裏スジ脇のくぼみに、体温計の先が当たるようにします。

舌下中央部付近は最も高温な部分であり、かつ外気の影響を受けにくいため、この部位が選択されます。

直腸温


直腸温を測定するメリットは、各測定部位の中で最も深部温度に近いため、より正確な数値を把握できることです。

実際に直腸温を測るときは、肛門の中に体温計を挿入して測定します。そのため、体の芯の温度を一番近くで知ることが出来るのがこの「直腸温」なのです。

しかし直腸温を測る上ではデメリットもあります。それは、強い羞恥心や不快感が伴うということです。

あなたも、いきなり肛門で体温を測定されたら非常に不快だと思います。そのため臨床では、直腸温測定の対象となる患者さんは限られています。

具体的には3ヶ月未満の乳児や意識の無い患者さんなどに選択されることが多いです。

それでは、直腸温を測定する上での注意点をお伝えします。

体位を保つ

直腸温を測定するときに一番怖いのが、「直腸を傷つけてしまう」ということです。

そのため、臥位かシムス位で行うことで、そのリスクを最小限にします。

体温計の先に、潤滑油をつける

何もつけずに挿入すると、患者さんは強い不快感を覚えます。ワセリンやゼリー等の潤滑油をつけましょう。

体温計が動かないようしっかりと固定する

測定中に患者さんの体動により体温計が深く入りすぎてしまったりすると、直腸を傷つける恐れがあるため危険です。必要以上に深く挿入されないよう、ゆびでしっかりと固定しながら測定しましょう。

挿入の深さは、乳児では2〜2.5p、成人では5〜6p位です。

特別な配慮が必要な場合の体温測定方法


ここまで見てきた体温測定方法は、特別な配慮が必要の無い患者さん対象でした。

しかし臨床では、さまざまな理由により、体温測定時に特別な配慮が必要になる場合があります。そのような場合の体温測定方法についてみていきましょう。

患者さんが側臥位にしかなれない場合

「痛みが強く動けない」などの理由により、患者さんが横向きにしかなれない場合があります。この場合は、上と下、どちらの腋窩で測定するのが正解だと思いますか?

答えは、上側の腋窩です。

下側の腋窩は、血液循環が上側に比べて悪くなっているため、体温が低めに測定されてしまうからです。

乳幼児を測定する場合

小さな子どもの熱を測るのは大変です。体温測定の必要性が認識できず、拒否することが多いからです。

特に、機嫌が悪く大泣きの子どもの腋窩温測定は、困難を極めます。

このようなときは、保護者の協力を仰ぐのがベストです。保護者がしっかりと腋窩に体温計を挿入できているのが確認できれば、そのまま見守ります。おもちゃなどで気を引き、落ち着いてくれた隙に短時間で測定するのがよいでしょう。

また、「乳幼児だから理解できないだろう」と何の説明もせずにいきなり腋窩に挿入してはいけません。

笑顔で「お熱を測るよ」と語りかけながら、「まずは看護師自身の腋窩に体温計を挿入するポーズを見せる」などを行い、成長発達段階に合わせた説明をするように心がけます。

患者さんに麻痺がある場合

患者さんに麻痺がある場合も、「麻痺側と健側のどちらで測定しようか」と悩むと思います。

このような場合は、健側で測定します。理由は、麻痺側は血液循環が悪く、正確に測定することが困難だからです。

ここまで見てきて、体温の測定方法と注意点については分かりましたでしょうか。

知識を得たら、あとは実践あるのみです。毎回きちんと考えながら体温測定することを心掛ければ、それだけで大きく看護スキルを向上させることができます。

 

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