体温の測定方法と、やってしまいがちな注意点

 

「そもそも体温って何なんだろう?」という体温の基礎が分かったところで、次に体温のアセスメントについてお話していきます。
まずは、体温の測定方法や注意点についてです。

 

体温の測定部位

体温の定義は、体の芯の部分の温度である「深部温度」であることは基礎編でお話しましたね。
そこでも触れた通り、深部温度を測定する代わりに口腔温、腋窩温、直腸温、鼓膜温を測定します。これからそれぞれの測定方法や注意点について説明します。書かれているのは基礎的なことばかりですが、うっかり何も考えずに測定しておかしな数値になってしまった…というのは意外と臨床で起こりうることなので、しっかりとイメージしながら確認してください。

 

腋窩温

最もポピュラーな体温の測定場所が、腋窩になります。それは、他の箇所に比べ最も安全性が高く、患者さんへの負担が少ないからです。
ここでは、腋窩温を測定する上での注意点についてお伝えします。

 

測定前は、食事や激しい運動、外出後は避ける。
入院中の患者さんで激しい運動を行う人はほぼいないと思いますが…意外とやってしまいそうなのが、食後や外出後の体温測定。基礎編でもお伝えした通り、体温には行動差があります。平熱よりも高く測定されてしまうことがあるので、できれば30分はあけてからにしましょう。
特に小さな子どもは代謝が盛んであり、腋窩に汗をかいていることがとても多いので、汗をかいていないか確認してから測定するようにしましょう。汗をかいている状態で測定すると、本来の値より低く測定されてしまいます。(体温計が汗によって遮られてしまい、皮膚と密着させることができないため。また、汗が蒸発するときに気化熱を奪ってしまうため、体温が低く測定されてしまう。)

 

環境の調整
患者さんが掛け物をかけすぎて汗をかいていたり、薄着過ぎて寒がっていたりしたら、正確な体温を測ることはできません。今の環境が患者さんにとって適温であるかも確認しましょう。

 

口腔温

口腔温は、主に女性が基礎体温を測定するときなどに選択されます。なぜ腋窩温でなく口腔温かというと、口腔温のほうが外気とふれにくく信頼性が高いため、そして腋窩温よりもより深部温度に近いのでより正確な数値を把握できると考えられるためです。
 
口腔温を測定する上での注意点をお伝えします。

 

測定前は、冷たいものや熱いものの摂取を避ける。
測定前の10分は、このようなものを摂取しいないようにしましょう。また、歯磨きもNGです。

 

体温計を挿入させる部位は、舌下中央部付近。(舌の裏のスジのすぐ横)
舌下中央部付近は最も高温な部分であり、かつ外気の影響を受けにくいためこの部位が選択されます。

 

直腸温

直腸温を測定するメリットは、各測定部位の中で最も深部温度に近いため、より正確な数値を把握できることです。
しかし一方では、強い羞恥心や不快感が伴うというデメリットもあります。
臨床では、3ヶ月未満の乳児や意識の無い患者さんなどに選択されることが多いです。
直腸温を測定する上での注意点をお伝えします。

 

◎体位を保つ
側臥位シムス位で行います。

 

◎体温計の先に、潤滑油をつける
何もつけずに挿入すると、患者さんは強い不快感を覚えます。ワセリンやゼリー等の潤滑油をつけましょう。

 

◎体温計が動かないようしっかりと固定する
測定中に患者さんの体動により体温計が深く入りすぎてしまったりすると、とても危険です。必要以上に深く挿入されないよう、ゆびでしっかりと固定しながら測定しましょう。ちなみに、挿入の深さは乳児では2〜2.5p成人では5〜6p位です。

 

こんなときどうする!?特殊な場合の測定方法

ここでは、臨床で遭遇しがちな、特殊な場合の測定方法をお話します。

 

患者さんが側臥位にしかなれない場合
この場合は、上と下、どちらの腋窩で測定するのが正解でしょうか?
答えは、上です。
下側の腋窩は、血液循環が上側に比べて悪くなっているため、体温が低めに測定されてしまうからです。

 

乳幼児を測定する場合
機嫌が悪く大泣きの子どもの腋窩温を測定するには、保護者の協力を仰ぐのがベストです。保護者がしっかりと腋窩に体温計を挿入できているのが確認できれば、そのまま見守ります。おもちゃなどで気を引き、落ち着いてくれた隙に短時間で測定するのがよいでしょう。乳幼児だから理解できないだろう、と何の説明もせずにいきなり腋窩に挿入するのでなく、優しい笑顔で語りかけながら、まずは自分の腋窩に挿入するポーズを見せたり…等、成長発達段階に合わせた説明を心がけます。

 

患者さんに麻痺がある場合
麻痺側は血液循環が悪いため、健側で測定します。


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