体温調節の本部 「体温調整中枢」
人間は体温がほとんど変化しない「恒温動物」である
昔々生物の時間に習った記憶がある方もいるかもしれませんが、動物にはほとんど体温が変化しない「恒温動物」と、外気温に合わせて自分の体温も変動してしまう「変温動物」がいます。人間は、そう、ほとんど体温が変化しない「恒温動物」ですね。実は、体温を一定にキープするのはとてもエネルギーが必要なんです。その証拠に人間は、食物から作った熱のうちの、なんと75%も体温維持に使っているのです。こうやって一生懸命作り出したエネルギーを使って、私たち人間は体温をキープしています。
体温調整の本部は、体のどこにあるでしょうか。
体温調整の本部(これを、体温調節中枢といいます)は脳にあります。正確に言うと、体温調整中枢は脳の中でも「間脳」と呼ばれている部分の「視床下部」にあります。
体温調整中枢である視床下部に温度の情報を送っているのは、以下の2つの受容器があります。
「深部体温の受容器」と「皮膚温の受容器」です。
※受容器:受容器とは、特定の刺激に反応するスイッチのようなものです。つまりこの場合は、温度に反応して、その温度の情報を体温調整中枢に報告してくれる役割をもっています。
@深部体温受容器
深部体温受容器には、視床下部ー視索、中脳、延髄、脊髄という、まさに人間の神経伝達の核となっている深部に存在しています。人間の深部で体温をモニタリングし、その情報を体温調整中枢である視床下部に送っているのです。そして深部体温受容器には、「温度感受性ニューロン」とよばれるニューロンがあります。ちなみにニューロンとは、情報を伝達してくれる細胞のことです。
A皮膚温受容器
皮膚温受容器は、文字通り「皮膚」にあります。皮膚で、皮膚温や周りの物体の温度をモニタリングしています。
これらの受容体で感知された温度情報が、神経を通って体温調整中枢である視床下部に送られます。そして視床下部が、熱を放散させたり抑制させたりといった体温調節を行うよう、各器官に命令するのです。
体温調整中枢の働き
体温調整中枢である視床下部には、ある一定の温度が設定されています。これを、「セットポイント」と呼びます。
視床下部では、この「セットポイント」と受容器から送られてきた温度情報の差を把握し、生体にとって最適な体温に戻すような働きをしています。
※セットポイント:セットポイントは、通常平熱である37℃前後に設定されています。しかし、例えば感染症などに罹患し体温を高く保たなくてはいけなくなった場合などには、セットポイントが38℃?39℃に設定されることもあります。このように、セットポイントはその時々で設定が変更されるのです。
それでは下記の例で、具体的な視床下部の働きを見てみましょう。
<例:北風がびゅーびゅー吹き荒れる寒い日に、体温調整中枢である視床下部が体温をキープしてくれる働き>
@皮膚温受容器である「皮膚」が、”寒い(寒冷)!!”という情報をキャッチ。この情報は、神経を通って視床下部に送られる。
A視床下部は、最適な体温を保つべく、各関係器官に情報伝達を行う。この場合では、まず熱を作り出す反応を起こさせる。
1)下垂体前葉:甲状腺刺激ホルモンを増加させ、代謝を促進させる。
2)副腎髄質:副腎髄質ホルモンの分泌を促進させ、代謝促進、熱産生を促す
3)体のふるえ、食欲増加、意識的な運動量の増加(寒い日に手をこすり合わせるなど)
B次に、作り出された熱を外へ逃がさないための反応を起こさせる。
1)副腎皮質:熱の放散を少なくするため、皮膚への血流を低下させるべく、ノルアドレナリンが分泌される。
こうして、視床下部は体温をキープしてくれるのです。
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