失神とは

 

ここでは、意識障害の一つである失神についてみていきましょう。

 

失神は、「脳血流が急激に減少したために生じる一過性の意識消失(発作)」と定義されます。意識障害の中でも一過性である、という点が特徴です。

 

失神は一過性なので、「患者さんが倒れました!!」…との一報を受けて現場に駆け付けた時にはすでに、患者さんの意識は回復していて会話もできるようなことが多いです。失神の場合には患者さんは、意識を失ったこと、そしてその間の記憶がないことをある程度わかっていることが多いです。

 

失神の場合、意識障害は一過性なので脳や全身に異常があることは少ないです。しかし、時折重大な疾患が隠されていることもあるので注意が必要です。

 

以下に、失神を引き起こす病態とその特徴についてまとめます。(スマートフォンの方は画面を横にしてご覧ください)

 

病態 メカニズム 特徴
起立性低血圧 起立性低血圧については、起立性低血圧に詳細が書いてありますのでご確認ください。簡単に言うと、臥位(寝そべった状態)では血圧は正常なのにもかかわらず、坐位や立位になったときに血圧が低下してしまう病態です。交感神経がうまく働かないために起こります。

・立ち上がるときに、ふらつきやめまいなどの自覚症状がある
臥位では正常血圧なのにもかかわらず、坐位や立位を取ると収縮期血圧(最高血圧)が20mmHg以上低下する

血管迷走神経反射 迷走神経とは、副交感神経のことです。迷走神経の働きが活発になって交感神経の働きが低下してしまうと、心拍数は低下し、末梢血管は拡張します。末梢血管が拡張すると、末梢の血液がうまく心臓に戻っていかなくなるために、血液が末梢にたまります。そのため脳への血流が低下してしまいます。

・10代や若年成人に多い
・発作の前兆としてめまいを感じたり、発汗、顔面蒼白をきたす
・採血などの時に起こることも多い。また、悪い知らせを聞いた時など感情が激しく動揺したときに起こることもある
・失神発作は1〜2分程度
・発作中、体は弛緩している
・意識回復後、悪心、発汗をみとめる

過換気 過換気になると、体の中の二酸化炭素がはけ過ぎてしまいます。すると、脳の血管は収縮し、脳血流が低下してしまいます。

・若い女性に多い
・精神的に不安定な状態で発症しやすい
・四肢末端のしびれ感や異常知覚を訴える

心律動異常 頻脈性の不整脈や、徐脈性の不整脈のために、心拍出量が低下し、脳血流が低下してしまいます。

・中高年に多い
・虚血性心疾患の既往がある
・不整脈がみられる。発作中脈が触れなくなる
・動悸を感じる

ヒステリー発作 精神疾患の一つです。意識的にせよ無意識的にせよ、失神して他人の興味を引こうとする反応です。

・10代や若年成人に多い
・発作を生じてもけがをすることはない
・発作中の運動は、意識的かつ協調的
・発作中の記憶がないと主張する

 

 


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