観血的動脈圧モニタでの血圧測定
血圧測定方法と注意点@、血圧測定方法と注意点Aで説明した血圧測定の方法は、「非観血的測定法」と呼ばれているものです。「非観血的測定法」とは、その名の通り「血を見なくても測定できる方法」という意味になります。確かに、聴診法や触診法は、マンシェットを巻いてシュポシュポするだけで、血圧が測定できてしまいますもんね。
これから説明するのは「観血的測定法」つまり、「血が見える測定方法」です。
どのような時に観血的測定法は選択されるのか
通常、臨床ではマンシェットを巻いてシュポシュポする非観血的測定法が選択されます。理由は単純で、患者さんへの負担が少ないからです。観血的測定法では、動脈にカテーテルを挿入しなくてはいけないため、患者さんにとってリスクが大きいからです。
それでは、どんなときにわざわざ観血的測定法が選択されるのでしょうか。
それは、大きい手術後やショック時など循環動態が変化しやすい時です。実は観血的測定法では血圧の波形を1拍ごとにみることができるため、重症患者さんの血圧を丁寧にかつ連続的にモニタリングできるというメリットがあるのです。
観血的測定法のしくみ
動脈にラインを挿入するだけで、なぜ血圧を測定することができるのでしょう?
観血的測定法を行うためには、「観血的動脈圧モニタ」と呼ばれるモニターが用いられます。この観血的圧動脈圧モニタの仕組みを簡単に説明しますね。
そもそも血圧とは、「血液が血管を押す力」のことでした。ということはつまり・・・血液が「血管の代わりの何か」を押す力が測定できれば、それが血圧ということができるのです!
観血的動脈圧モニタでは、動脈ライン(A-Line)を挿入して血液に別の道を作ってあげたうえで、その道の途中に「血液の圧を電気信号に変えるセンサー」を取り付けます。(このセンサーを、圧トランスジューサといいます)血液がこのセンサーを押す力を測定し、それを血圧とするわけです。
ちなみに実際の測定では、血液が直接センサーを押すわけではありません。動脈ラインで作った別の道が、血液で凝固して使えなくなってしまっては大変だからです。動脈ラインに、血液の代わりとしてヘパリン入りの生理食塩水で満たしておき、そのヘパリン入り生食がセンサーを押す力を血圧としています。
観血的動脈圧モニタの構成
観血的動脈圧モニタの装置は、なんだか複雑に見えますよね。でも実は、たった4つの要素で成り立っているのです。その4つとは、針、モニタリングライン、圧トランスジューサ、モニタ本体です。
順にみていきましょう。
@針
観血的測定法においては、そもそも針を挿入しなければはじまりません。動脈針を留置することが必要です。
Aモニタリングライン
針(とその先につながっているカテーテル)と、圧トランスジューサをつなぐラインです。モニタリングラインには三方活栓がついており、この三方活栓にはフラッシュ装置やヘパリン入り生理食塩水が繋がっています。なおヘパリン入り生理食塩水は、加圧バッグに入れられて300mmHgで加圧され、3ml/時の速度で持続注入されています。この理由は、動脈は圧が高いため、通常の輸液では血液が逆流し凝固してしまう可能性があるからです。採血後などには、そのつどフラッシュ装置を操作して、微量のヘパリン入り生食を一気に注入します。
B圧トランスジューサ
圧トランスジューサは、「血液の圧を電気信号に変換する装置」です。固定板にセットされています。
患者さんの体位によって血圧は変動してしまうので、患者さんの体位変換やベッドの高さを変えた後には必ず「0点調整(0点補正などとも呼ばれる)」を行います。
※0点調整の行い方
圧トランスジューサを右房の高さに合わせ、カテーテルを大気圧開放状態(トランスジューサ上部の三方活栓を患者さん側に倒す)にし、モニタの「ゼロ点調整ボタン」を押し、Aモニタ上が0になるのを確認します。その後患者さん側に倒した三方活栓を元に戻し、数値と波形がしっかり表示されたのを確認すれば終了です。なお、トランスジューサ上部の三方活栓を倒す方向を間違えると大変なことになります。血液が逆流し、一面血の海になりますので十分ご注意を・・・・
Cモニタ本体
トランスジューサで感知された信号を読み取り、血圧の波形と血圧値を表します。ちなみにモニタは、よく使われるベッドサイドモニターです。ベッドサイドモニターの専用差込口に差すことで、血圧値と波形が表示されます。
観血的動脈圧モニタの注意点
なんといっても、動脈ラインの管理を丁寧に行うことです。
挿入部に感染はおきていないか、事故抜去のリスクはないか、毎ラウンドごとに確認します。
なお、4つの感染徴候はわかりますでしょうか?発赤、腫脹、熱感、疼痛です。これらの兆候はほかの感染を見るうえでも役に立つので覚えておきましょう。
※ちなみに・・・
観血的測定法では、非観血的測定法にくらべて収縮期血圧が5〜10mmHg程度高く、拡張期血圧は低く表示されることがあります。そのため、観血的測定法で持続モニタリングしているとはいっても時折非観血的測定法で測定することも必要です。
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