呼吸器系の構造と働き:縦隔、胸郭
ここまで、呼吸に直接関係する気道や肺について説明してきました。
続いて、肺はどこにあるのか、というお話です。
縦隔
縦隔とは、臓器の名前ではありません。縦隔は、胸の中のとあるエリアを指しています。
「縦隔」という言葉が指し示すエリアは、左右は肺、前は胸骨、後ろは脊椎、下は横隔膜に囲まれたエリアのことです。このエリアには、肺はもちろん、心臓や心臓に出入りする血管、気管や気管支、食道などが存在しています。
縦隔は、さらに細かく4つのエリアに分けることができます。上縦隔、前縦隔、中縦隔、後縦隔の4つです。
それぞれ、上縦隔は縦隔の一番上(胸骨柄下縁)〜第四胸椎まで、前縦隔は胸骨と心膜前面の間、中縦隔は心膜の前面と後面の間、後縦隔は心膜後面と胸椎(脊髄の一部)の間のエリアに分かれています。
胸郭
胸郭とは、簡単に言うと胸部の骨格のことです。胸部の骨格である胸郭の中に、肺はあります。
胸郭は、胸骨、肋骨、胸椎(脊髄の一部)やそれに付随する筋肉からできています。
胸郭の内部は、2つの膜(胸膜)でおおわれています。胸壁(胸郭の壁のこと)に張り付いている膜を壁側胸膜、肺に張り付いている膜を臓側胸膜といいます。そして、この2つの胸膜の間には空間が存在しており、この空間を、胸膜腔(胸腔)といいます。ちなみにこの空間(胸腔)は、少量のリンパ液で満ちています。
胸腔は常に陰圧で保たれています。安静時の胸腔内圧は-5cmH2O〜-10cmH2Oです。
※陰圧とは:大気圧よりも圧が低い状態です。圧は、高いほうの圧から低いほうの圧へと移動していく性質があります。
「高いほうの圧→低いほうの圧」この矢印の向きをよーく見てください。 「→低いほうの圧」 すなわり、低いほうの圧は空気を引っ張る力があるのです。
胸腔内は陰圧、つまり空気を引っ張る力があるために、肺はひっぱられて膨張し、その形を保つことができています。
※胸腔内圧とは:胸腔内の圧力のこと。単位はcmH2O (水柱センチメートル)であらわされる。ちなみに、1 cmH2O は1cmの水の柱を支えることのできる圧力でを表します。ここで「1cmの水の柱」と書きましたが、1cmの水の柱なんてものは見たことがありません。現実的に考えると、水深1cmのときの水圧とも言い換えることができます。
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