「なぜ」「どのような仕組みで」発熱するのか

 

 

「人間の平熱が何度であるか」に答えはありません。なぜなら、平熱は人によって異なるからです。しかし、一般的には36.6℃〜37.2℃が日本人の平均的な体温であると言われています。

 

元気なとき、私たちは脳の中にある「視床下部」の働きによって、体温を一定に保つことができています。

 

しかし、「感染症」「悪性腫瘍」「環境の変化」などのさまざまな理由により、体温が高くなってしまったり低くなってしまったりすることがあります。このような体温の異常が続けば、体にさまざまな悪影響を及ぼします。

 

まずは、体温が高くなってしまった状態である「高体温」についてみていきましょう。

 

高体温とは?

 

高体温とは、体温が異常に高くなった状態のことです。

 

ただし、一口に「高体温」とはいっても、原因別に2種類に分けることができます。

 

それが、「発熱」と「うつ熱」です。

 

「発熱」と「うつ熱」は、どちらも「高体温の仲間である」という点については共通しています。それでは違う点はどこかというと、高体温を引き起こす原因です。

 

発熱は感染症などの「内的要因」、うつ熱は周辺環境の暑さなどの「外的要因」により起こるのです。

 

発熱の定義と分類

 

発熱の話をする前に、まずは「私たちが体温をどのようにして調整しているのか」についての復習です。

 

体の中には、「体温を調節するための本部」があります。これを、体温調節中枢といいます。

 

体温調節中枢は、間脳の「視床下部」にあります。

 

「なぜ」「どのような仕組みで」発熱するのか

 

視床下部では、「セットポイント」と呼ばれる温度が設定されています。セットポイントとは、個々に合わせた「適温」のことです。いわゆる平熱がセットポイントに当たります。

 

そして視床下部では、体が常に「セットポイント」に設定された体温になるように、各器官に指令を出す役割をしています。

 

例えば、あなたのセットポイントが36.5℃だとします。その場合、あなたの視床下部では、外の環境が何度であろうと体の中を36.5℃に保とうとする働きが行われているのです。

 

ここで、「発熱」の話に戻ります。

 

上述したとおり、発熱は、「感染症にかかってしまった」などの内的要因により引き起こされます。

 

感染症にかかると、体は病原菌と戦わなくてはいけません。そんなとき、体温を上げれば、病原菌の働きを弱めて、白血球の働きを促進することができるのです。このような理由で、体としては、感染症にかかったらすぐに熱を上げたくなります。

 

発熱は、「何度まで熱が出たのか」によって3つに分類することができます。

 

@微熱:37℃〜38℃未満

 

A中等熱:38℃〜39℃未満

 

B高熱:39℃以上

 

ただし、先述したとおり、体温には個人差があります。分類上は「微熱」とされてしまう37℃でも、平熱の人もいるのです。

 

そのため、臨床では、発熱は「平常時体温より1℃以上高くなった場合」と定義されます。

 

先ほど例に挙げた「平熱が37℃の人」にとってみれば、38℃以上になったときが「発熱している」という状態になります。

 

それでは次に、「発熱はどのように起きるのか」について説明します。

 

発熱の機序

 

感染が起こると、「白血球」「マクロファージ」などの、ウイルスを食べてやっつけるタイプの免疫細胞の働きが活発になります。ちなみに、ウイルスを食べてやっつけるタイプの免疫細胞のことを、「免疫活性食細胞」といいます。

 

そして、働き始めた免疫活性食細胞たちは、「サイトカイン」という物質を作り出します。サイトカインは、「発熱物質」と呼ばれる「発熱を起こさせる物質」の一つです。

 

「なぜ」「どのような仕組みで」発熱するのか

 

サイトカインはタンパク質でできており、「他の細胞に情報を伝える」というメッセンジャー的な役割を持っています。

 

今回の場合では、サイトカインは「感染がおきたぞ!発熱を起こして病原体を撃退せよ!」という情報を持っています。そしてこの情報を体温調節中枢である視床下部に伝達すべく、視床下部へと向かいます。

 

サイトカインは血液の流れに乗って視床下部へと向かうものの、途中で「血液脳関門」と呼ばれる門に邪魔をされます。サイトカインは、「血液脳関門」があると、脳の中へ入ることができないのです。これではいつまでたっても情報を視床下部に伝えることができず、困ってしまいます。

 

そのため、サイトカインは「プロスタグランジンE2」という物質の作り出します。プロスタグランジンE2であれば、血液脳関門を突破することができるからです。

 

「なぜ」「どのような仕組みで」発熱するのか

 

そして、作り出されたプロスタグランジンE2が、サイトカインの代わりに視床下部へと向かうのです。そして、情報は無事に視床下部に伝達され、視床下部は体の各器官に体温を上げるよう、指令を出すことができます。

 

これによって、体の各機関では「皮膚の血管収縮」「鳥肌(皮膚の毛穴を閉じる)」などの熱放散を抑える活動や、「筋肉を震わせる」などの熱産生(ねつさんせい)を促す活動が行われ、体温が上がるのです。

 

発熱の原因

 

先ほどの説明で、発熱が引き起こされる仕組みについては理解できたでしょうか。

 

それでは次に、発熱の原因についてのお話をしていきます。

 

発熱の原因は、大きく分けて5つあります。しかし、いずれも「内的要因」と呼ばれる、「自分自身の体の反応」によるものだということは覚えておいてください。

 

@感染症による発熱

 

A悪性腫瘍による発熱

 

B自己免疫疾患・アレルギー疾患による発熱

 

C薬剤、輸血の副作用としての発熱

 

D中枢性発熱

 

このように、「高体温」の一種である「発熱」にはいろいろな原因があります。しかし、どのような原因であっても共通しているのは、自分自身の体の反応によりセットポイントが変更されて発熱しているということです。

 

発熱の場合は、「病原菌と戦う」「アレルギーに対抗する」などの理由があり、高体温となっているのです。

 

臨床で最も頻繁に遭遇する「発熱」の背景について、しっかり覚えておいてください。

 

 

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