体温の異常:高体温〜発熱〜
体温の測定方法、注意点については理解できましたね?
続いて、測定した体温に異常があったら…のお話です。
体温の異常は、「高体温」と「低体温」に分けられます。
高体温とは?
高体温とは、体温が異常に高くなった状態のことです。
その原因として、「発熱」と「うつ熱」に分けられます。
発熱とうつ熱。これらの違いは、発症メカニズムです。発熱は感染症等の内的要因、うつ熱は周辺環境の暑さ等の外的要因によりおこります。それではそれぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
発熱
発熱とは、視床下部にて設定されているセットポイントが上昇し、体温が高められていることをいいます。
発熱は、体が感染症に罹患する、等の内的要因により起こります。
発熱は、3つに分類することができます。
@微熱:37℃〜38℃未満
A中等熱:38℃〜39℃未満
B高熱:39℃以上
ただし、基礎編でもお話した通り、体温には個人差があります。常用的には、発熱とは「平常時体温より1℃以上高くなった場合」を指しますので、平熱が37℃の人にとってみればそれが平熱の状態なのであり、この人にとっては38℃以上が発熱しているという状態になります。
それでは次に、発熱の機序について分かりやすく説明します。
発熱の機序
感染が起こると、白血球やマクロファージなどの、ウイルスを食べてやっつけるタイプの免疫細胞(これを免疫活性食細胞という)の働きが活発になってきます。この免疫活性食細胞たちの働きにより、「サイトカイン」という物質が作られます。
※サイトカイン:発熱物質(発熱を起こさせる物質)の一つ。サイトカインはタンパク質であり、他の細胞に情報を伝えるという役割を持っています。ここでは「敵襲!感染がおきたぞ!発熱を起こして敵を撃退せよー!」…という情報を持っており、これを体温調節中枢である視床下部に伝達すべく、視床下部へと向かいます。
サイトカインは血液の流れに乗って視床下部へと向かうものの、途中で血液脳関門と呼ばれる門があり、脳の中へ入ることができません。そのため、サイトカインはプロスタグランジンE2という物質の産生を促し、プロスタグランジンE2がサイトカインの代わりに視床下部へと向かうのです。そしてこのプロスタグランジンE2が、視床下部に作用し、視床下部は体の各器官に体温を上げるよう、指令を出します。これにより、皮膚の血管収縮、鳥肌(皮膚の毛穴を閉じる)等の熱放散を抑える活動、筋肉を震わせる等の熱産生を促す活動が行われ、体温が上がるのです。
ちなみに、なぜ感染が起こると発熱するのでしょう。
その理由として、体温が高いほど病原菌の活動が弱まり、白血球の活動が促進されるためであるといわれています。
発熱の原因
発熱の原因は、大きく分けて5つあります。
@感染症による発熱
A悪性腫瘍による発熱
B自己免疫疾患・アレルギー疾患による発熱
C薬剤、輸血の副作用としての発熱
D中枢性発熱
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