呼吸中枢の場所と化学受容体の関係
普段意識することなく行っている呼吸ですが、運動したり緊張したりすると、自然と呼吸は早くなりますね。それでは、呼吸を調整する本部(呼吸中枢)は体の中のどこにあり、どのような働きをしているのかみていきましょう。
呼吸中枢の場所
呼吸を調整する本部、呼吸中枢は、脳の中の「延髄」「橋」にあります。
呼吸中枢には、大きく分けて2種類あります。それぞれの呼吸中枢について、以下でより詳しく確認していきます。
@(延髄)呼吸中枢
延髄呼吸中枢は、簡単にいうと「呼吸そのものを調整する本部」です。ここでは、呼吸の基本的なリズムを定めています。
呼吸には、息を吐く「呼気」と息を吸う「吸気」の2種類があります。延髄には、呼気時に興奮して呼気運動を促す呼気ニューロン(延髄の腹側にある)と、吸気時に興奮して吸気運動を促す吸気ニューロン(延髄の背側にある)があります。
A呼吸調整中枢
また、橋と呼ばれる場所にも呼吸中枢が存在します。呼吸中枢の中でも呼吸調節中枢と呼ばれており、その名の通り「呼吸のやり方を調整する本部」になります。呼吸調節中枢では、延髄呼吸中枢に信号を送ることで呼吸リズムを整えています。延髄呼吸中枢のサポーター的役割だといえます。
私たちが無意識のうちに行っている呼吸は、上記2つの呼吸中枢が行ってくれています。しかし、意識して深呼吸をしたり、息をこらえたりといった場合は、大脳皮質が呼吸中枢に働きかけて行われています。
呼吸中枢はどのように情報を渡しているのか
それでは、呼吸中枢はどのようにして「いま呼吸を増やさなくてはいけない」「いまは呼吸を抑えないといけない」などの情報を判断しているのでしょうか。
情報を受け取る役割を負っているのは、主に中枢性化学受容体と末梢性化学受容体と呼ばれる2つの化学受容体です。これから説明する2つの化学受容体は、周囲の血液ガスの変化を察知して、呼吸中枢に報告しています。つまり、「化学受容体が血液ガス(血液中の酸素濃度など)を検知する→呼吸中枢へ信号を送る→呼吸を早くしたり抑えたりする」という流れになります。
※化学受容体:受容体とは、特定の物質に反応するスイッチのようなものです。その中でも化学受容体とは、周囲の化学組成(今回の場合は、酸素などの血液ガス)の変化に反応する受容体のことです。
@中枢性化学受容体
日常的に、メインで働いているのはこの中枢性化学受容体です。中枢性化学受容体は、延髄の腹側付近にあります。体内のCO2の情報を察知して、CO2が変化したら呼吸中枢に報告する働きがあります。
ちなみに中枢性化学受容体は、動脈血中のCO2上昇を直接感知しているのでなく、髄液中に入ったCO2が産生するH+の濃度上昇を感知しているといわれています。
A末梢性化学受容体
末梢性化学受容体には、頸動脈にある頸動脈小体と、大動脈弓にある大動脈小体があります。こちらの受容体は、O2が低下したときに呼吸中枢へ働きかけます。
先ほども説明した通り、日常的にメインで働いているのは中枢性化学受容体です。末梢性化学受容体が働きはじめるときは、生命を脅かすくらい高度のO2が低下した時です。
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