体温の異常:低体温
低体温とは、高体温の逆で体温が異常に低くなった状態を指します。
低体温の定義は、深部体温(直腸温など)が35℃以下に低下した状態を指します。
低体温症には大きく分けて2つの原因があります。
一つ目は、脳の手術などのためにあえて患者さんの体温を低下させる「誘発性低体温症」
そして、二つ目は事故や不慮の事態で起こる「偶発性低体温症」です。
ここでは偶発的低体温症について分かりやすく説明します。
偶発性低体温症
偶発性低体温症の原因には、寒冷環境(冬山での遭難等)、熱喪失状態(皮膚疾患等)、熱産生低下(低栄養等)、体温調節機能低下(高齢者、乳幼児、内分泌疾患等)、の4つがあります。これらの原因が単独で、または様々な原因が絡み合って偶発的低体温症が発症します。
日常的には、お酒や睡眠薬を飲んだ後、屋外で寝てしまった場合によく起こります。
低体温は、3つに分類することができます。
@軽度低体温(35〜32℃)
A中等度低体温(32〜28℃)
B高度低体温(28℃以下)
偶発的低体温症の機序
体温が下がり始めると体は、皮膚の血管収縮、鳥肌等の熱の放散を抑える活動や、骨格筋の震え(シバリングという)等の熱産生を促す働きを始めます。これら体温を維持しようとする反応を、「寒冷反応」といいます。寒冷反応を起こすことにより、なんとか体温を上昇させようとするのです。この状態は非常にエネルギーを使うため、呼吸も脈拍も早くなります。酸素の消費量は、平常時の3〜6倍にもなるのです。
しかしそれでもなお体温が低下し続けてしまった場合は、徐々に体は抑制状態に入ってきます。脈は徐脈になり、呼吸もゆっくりしたものになってきます。
目安として、軽度低体温ではシバリングが見られ、中等度低体温ではシバリングが消失し、高度低体温では筋肉は硬直します。
また、体温が30℃以下まで低下してくると、不整脈のリスクが増大し、意識障害も出現してきます。なお、脳の血流・代謝は体温が1℃低下するごとに6〜7%減少してゆき、30℃で50%、25℃で75%減少します。このことは、脳蘇生には有効に作用します。
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