「低体温」とはどのような状態か

 

 

低体温は、体温の異常の一つです。

 

低体温を簡単に説明すると、「体温が異常に低くなった状態」を指します。具体的には、深部体温(直腸温など)が35℃以下に低下した状態です。

 

人間の平熱はおよそ36〜37℃であるため、「低体温」と呼ばれる体温35℃以下の状態というのは、体温が非常に低下している状態であるということが分かると思います。

 

低体温症には大きく分けて2つの原因があります。

 

一つ目は、脳の手術などのためにあえて患者さんの体温を低下させる「誘発性低体温症」です。こちらは、熱を故意に低下させることで、35℃以下の状態にしています。

 

そして、二つ目は事故や不慮の事態で起こる「偶発性低体温症」です。こちらの場合は、患者さんの意思に反して低体温になってしまっています。

 

まずは、「偶発性低体温症」について分かりやすく説明します。

 

偶発性低体温症

 

「偶発性低体温症」は、事故や不慮の事態に遭遇した結果、体温が35℃以下になってしまった状態を指します。

 

偶発性低体温症の原因としては、主に以下4つが考えられます。

 

・冬山での遭難などの、「寒冷環境」

 

・皮膚疾患などの、「熱喪失状態」

 

・低栄養などの、「熱産生低下」

 

・高齢者、乳幼児、内分泌疾患等がリスクとなる「体温調節機能の低下」

 

これらの原因が単独で、または様々な原因が絡み合って偶発的低体温症が発症します。

 

低体温症が起こるときというのは、何も「冬山での遭難」などの特殊な状況だけではありません。日常的には、お酒や睡眠薬を飲んだ後、屋外で寝てしまった場合にも起こり得ます。

 

それでは次に、「偶発性低体温症」はどのようにして起こるのかみていきましょう。

 

偶発性低体温症の機序

 

何らかの原因より体温が下がり始めると、体はどうにか体温を保とうと、各器官にさまざまな指令を出します。具体的には、「熱を逃がさないようにする働き」と、「熱を作り出す働き」がなされます。

 

「熱を逃がさないようにする働き」では、皮膚の血管を収縮させたり、鳥肌を立たせたりなどすることで、どうにか熱を体内に保とうとします。

 

「熱を作り出す働き」としては、骨格筋を震えさせることで熱を新たに作り出そうとします。ちなみに、このときに体がぶるぶる震えることを「シバリング」といいます。

 

そして、今みてきた体温を維持しようとする反応を、まとめて「寒冷反応」といいます。

 

体温が下がってきてしまったら、体は寒冷反応を起こすことにより、なんとか体温を上昇させようとするのです。なお、寒冷反応が起きている状態は非常にエネルギーを使うため、呼吸も脈拍も早くなります。例えば酸素の消費量は、平常時の3〜6倍にもなるのです。

 

このような寒冷反応により、体温が回復した場合はよいです。

 

しかしそれでもなお体温が低下し続けてしまった場合、体は徐々に「抑制状態」と呼ばれる状態に入ってきます。脈は徐脈になり、呼吸もゆっくりしたものになってきます。

 

低体温の3つの分類

 

低体温は、「体温が何度になってしまったか」によって以下の3つに分類することができます。

 

@軽度低体温(35〜32℃)

 

A中等度低体温(32〜28℃)

 

B高度低体温(28℃以下)

 

当然のことながら、体温が下がれば下がるほど危険な状態になってしまいます。

 

それでは最後に、それぞれの分類ごとにどのような症状が出現するのかみていきましょう。

体温による「低体温症の症状」の違い

 

先述したように、低体温症は「軽度低体温」「中等度低体温」「高度低体温」の3つに分類することができます。そして、それぞれの時期で出現する症状が異なります。

 

例えば、「軽度低体温」のときにはシバリングが見られますが、「中等度低体温」になってしまうとシバリングが消失します。これは、はじめのうちは熱を作り出そうと必死になっていても、体温が低下し続けると体が「抑制状態」に入ってしまうからです。

 

そして、さらに体温低下が進んで「高度低体温」になってしまうと、筋肉は硬直します。ここまでいくと、一刻を争う非常に危険な状態です。

 

また、体温が30℃以下まで低下してくると、不整脈のリスクが増大し、意識障害も出現するという特徴もみられます。

 

なお、脳の血流・代謝は体温が1℃低下するごとに6〜7%減少してゆき、30℃で50%、25℃で75%減少します。脳血流が減少するというのは非常に危険なことではありますが、逆に言えばこのことは、「脳蘇生」という視点からみた場合には、有効に作用します。

 

一番最初に説明した「誘発性低体温症」は、このことからおこなわれているのです。

 

ここまでみてきて、「低体温症」というのは命の危機に直結する危険な状態であるということは、理解できたと思います。

 

「高体温」は熱が出て苦しくても、基本的には命に別状はありません。しかし、低体温の場合は、ただ「低体温である」というだけでダイレクトに命の危機にさらされる状態なのです。

 

そのため、「シバリングがある」「意識状態がおかしい」など低体温を疑わせる症状の人をみかけたら、速やかに対応していく必要があります。

 

 

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