脈拍の異常:脈拍の大きさ

 

「脈拍の大きさ」という概念は少しわかりづらいので、ここでもう一度おさらいしておきます。

 

脈拍の大きさとは、拍動の振り幅の大きさのことです。脈拍測定の際に、動脈に触れている指がどれくらい持ち上げられるかどうかで判断します。

 

脈圧が大きいと拍動の振り幅が大きくなります。これを「大脈」といいます。逆に、脈圧が小さいと拍動の振り幅が小さくなります。これを「小脈」といいます。
※脈圧:収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)の差のこと

 

脈拍の大きさの異常を引き起こす疾患

・大脈
大脈は、心臓の拍出量が多い場合にみられます。
※拍出量:1分間に心臓が拍出する(送り出す)血液の量
主な疾患には、大動脈弁閉鎖不全症、甲状腺機能亢進症などがあります。また、頭蓋内圧亢進時や、発熱時にもみられます。

 

・小脈
小脈は、大脈とは反対に、心臓の拍出量が少ない場合にみられます。
主な疾患には、大動脈弁狭窄症、心不全などがあります。また、左心室の機能低下時、出血や脱水等により循環血液量が減少した際にもみられます。

 

脈拍の大きさの異常  特徴的な脈

ここで、脈拍の大きさ異常の特徴的な脈を2つ挙げます。

 

・交互脈
交互脈とは、大脈と小脈が交互に現れる脈のことです。大脈と小脈が交互に、規則正しく繰り返されます。
発作性頻拍(発作性上室頻拍、発作性心室頻拍)の発作中に出現します。

 

・奇脈
奇脈とは、吸気時に小脈になり、呼気時に大脈になる脈のことです。健常者でも呼吸の周期によって脈拍の大きさはわずかに変化しますが、普通は観察することができないほどにわずかな変化です。奇脈であると、吸気時に収縮期血圧が10mmHg以上低下します。

 

なぜ奇脈は起きるのでしょう。
奇脈では、息を吸ったときに左心への血液量が減少します。左心は、大動脈へ血液を送り込む「体循環」であるため、息を吸ったときだけ体の中をめぐる血液量が減少してしまい、小脈になるのです。
少し詳しく言うと、吸気時に左心への血液量が減少する機序は、2通りあります。一つは、息を吸ったときに心臓の右室への血液量が増加し、大きくなった右室が左室の拡張を制限するためにおこります。そしてもう一つは、息を吸ったときに肺血管床(肺と血管でガス交換をするところ)が大きくなり、肺から左房へ流れ込む血液量が減少することによりおこります。

 

奇脈は、心タンポナーゼや心膜炎に特徴的にみられるほかに、気管閉塞、緊張性気胸、心筋炎、左室肥大、心不全、上大静脈閉塞症候群などでもみられます。 


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