意識状態悪化時の呼吸

 

呼吸をコントロールする中枢は、延髄と橋です。延髄と橋は、pHや酸素濃度の変化を察知すると、呼吸を増やしたり減らしたりします。そうすることで体の中のpHや酸素飽和度を一定に保とうとしているのです。
延髄や橋が行っているこれらの働きは、自動で行われています。しかし私たちは、それとは別に、意識して深呼吸をすることもできますよね。このように意図的に呼吸をするような場合には、大脳皮質が指令を出しています。

 

このことからわかるように、呼吸状態の変化は、脳の変化と考えることができます。(もちろん、ほかの原因の場合もあります)

 

患者さんが意識障害になった場合、特徴的な呼吸パターンを呈することがあります。臨床でこれら特徴的な呼吸パターンをみた場合には、脳のどの部位に異変が起きているのかおおよそ見当をつけることもできます。

 

意識障害の時に出現する呼吸パターンで重要なのは、大きく分けて3つあります。それぞれ順にみていきましょう。

 

@チェーンストークス呼吸
チェーンストークス呼吸では、まず数秒〜数十秒の呼吸停止がみられます。その後、浅ーい呼吸が始まり、徐々に徐々に深い呼吸となった後、再び浅い呼吸に戻ってまた呼吸停止になります。このサイクルを繰り返すのが、チェーンストークス呼吸です。およそ1〜2分でこのサイクルを繰り返すので、最低でも1〜2分観察する必要があります。
健康な人でも、高地で低酸素状態になったときや、乳幼児・高齢者の睡眠中にみられることがあります。
臨床では、脳出血、脳腫瘍、心不全、尿毒症、薬物中毒などでみられます。大脳の機能障害が両側に及ぶ場合(つまり、大脳が両方とも障害を起こしてしまった場合)にみられる呼吸パターンです。

 

A中枢性過呼吸
深く、早い呼吸が続く呼吸パターンです。脳幹の、中脳から橋にかけて障害が起こった場合にみられます。

 

B失調性呼吸
息をしたり、無呼吸になったり・・・と、呼吸は全く不規則のバラバラになります。呼吸回数も減少します。失調性呼吸は、もはや正常な呼吸とは呼ぶことができません。呼吸停止直前の状態であるといえます。呼吸中枢である延髄に障害が起こると生じる呼吸パターンです。

 

 

脳梗塞や脳腫瘍など脳に障害が起きてしまった場合、その症状の進行によって呼吸のパターンも変化していきます。病変が大脳の反対側や脳幹を圧迫していくにつれて、「チェーンストークス呼吸→中枢性過呼吸→失調性呼吸」と、呼吸障害が進行していきます。


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