肺機能検査:換気機能検査
臨床的に呼吸を測定する方法についてはわかりましたね。
それでは続いて、機材を使った呼吸の検査について説明していきます。
肺機能検査には、大きく分けて換気機能検査とガス交換機能検査があります。
換気機能検査はスパイロメトリー、ガス交換機能検査は動脈血ガス分析を行います。
ここでは、換気機能検査の説明だけ行います。血液ガス分析について知りたい方は、酸塩基平衡と血液ガスを読んでしっかり学習してください。
換気機能検査(スパイロメトリー)
呼吸をする時の呼気量と吸気量を測定することで、呼吸の能力を調べるのが「スパイロメトリー」です。なお、呼吸の能力を測定したもの(スパイロメトリーの結果)をスパイログラムといいます。
<測定方法>
@ノーズクリップ(鼻から息が漏れないようにするためのクリップ)をつけて、マウスピースを口にくわえます。
A普段している呼吸を何回かした後、一度限界まで息を吐き切り(最大呼気)、そのあと限界まで息を吸い(最大吸気)、もう一度限界まで大きく息を吐き切ります。これで肺活量を測定することができます。
B普段している呼吸を何回かした後、大きく息を吸い、勢いよく限界まで息を吐き出します。これで努力性肺活量を測定することができます。また、この時の呼吸量をグラフに表わすことで1秒間の呼気量を測定し(1秒量)、呼気率も計算できます(1秒率)。
<換気機能検査で測定する主な項目>
・肺活量(vital capacity:VC):息を最大限吸い込んだ後に、肺から吐き出した空気の量のことです。
・%肺活量(% vital capacity:%VC):予測肺活量(その人の年齢や身長から計算した、その年齢・身長の平均的な肺活量)に対する、実際の肺活量の割合です。簡単に言うと、その患者さんはどれくらいの肺活量を持っているか予想した中での、実際に機能している肺活量の割合のことです。
・努力性肺活量(forced vital capacity:FVC):息を最大限吸い込んだ後に、肺から一気に吐き出した空気の量のことです。肺活量との違いは、一気に吐き出した空気の量か否か、という点です。努力性肺活量は、一気に吐き出した時の空気の量になります。
・1秒量(forced expiratory volume 1.0:FEV1.0 ):努力性肺活量のうちの、最初の1秒間に吐き出された空気の量のことです。
・1秒率(forced expiratory volume 1.0(sec)%:FEV1.0%):努力性肺活量に対する、1秒量の比率のことです。
<基準値>
肺活量の基準値はは性別や年齢によって異なりますが、成人男性で4000-4500ml、成人女性で3000-4000mlとされています。
%肺活量の基準値は80%以上、1秒率は70%以上です。
<換気機能検査(スパイロメトリー)でどんなことがわかるのか>
換気機能検査を行うことで、肺機能障害の有無や、肺機能障害のパターンを把握することができます。肺機能障害には、拘束性障害、閉塞性障害、混合型障害があります。
@拘束性障害
%肺活量が80%未満、つまり肺から吐き出した空気の量が少なかった場合は、拘束性障害が疑われます。拘束性障害とは、肺や胸郭の病変により、肺が十分に広がらなくなってしまった状態のことです。肺線維症、肺間質の線維化、神経・筋肉の異常などが原因です。
A閉塞性障害
1秒率が70%未満、つまり空気を一気に吐き出した時の勢いがなかった場合は、閉塞性障害が疑われます。閉塞性障害とは、空気の出入り口である気道が狭窄してしまったために、空気が外に出にくくなった状態のことです。気管支ぜんそく、COPDなどが原因です。
B混合型障害
%肺活量が80%以下、かつ1秒率も70%以下の場合です。この場合は、肺が十分に広がらなくなってしまった上に空気の通り道にも狭窄が起きているような状態です。じん肺などがあります。
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