ウィーニングについて

 

ウィーニングとは、患者さんが人工呼吸器から離脱して自発呼吸に移行する過程のことをいいます。あくまで人工呼吸器から離脱させることをウィーニングというのであって、抜管することはウィーニングとはいわないため注意が必要です。もともとの語源は、英語で「乳離れ」を表す「weaning」であるといわれています。人間の乳離れでも、突然すぱーんと断乳することもあれば、徐々に卒乳させていくこともあるように、ウィーニングにも突然離脱させる方法と、徐々に離脱させていく方法とがあります。

 

このページでは、そんなウィーニングについて学んでいきましょう。

 

ウィーニングの開始基準

ウィーニングを検討するにあたって、まず大前提で押さえておきたい条件があります。

 

それは、呼吸不全の原因となった病態が改善傾向であることです。
そもそも原因となった病態に改善傾向がみられていなければ、ウィーニングがスムーズに進むことは考えられません。
病態が改善傾向にあることを確認したら、次に患者さんの全身状態を丁寧に確認していく必要があります。例えば、以下のような項目を確認します。

・自発呼吸があること
・強い貧血がないこと
・血圧や脈拍が安定していること
・水分出納バランスが崩れていないこと
・電解質異常がないこと

 

以上のような条件を満たしていることができたら、ウィーニングを開始できると判断されます。ちなみに・・・ウィーニングを行うための試験をSBT(spontaneous breathing trial :自発呼吸試験)といいます。

 

ウィーニングを行う前の準備

ウィーニングを行うためには、3つの段階を経なければなりません。それは、
@鎮静からの離脱
A人工呼吸器のサポートからの離脱
B人工気道からの離脱
です。
そのため、前述したウィーニングの開始基準に当てはまったから即ウィーニングを始めよう!・・・というのではなく、まずは準備が必要になるのです。

 

まず、鎮静薬は減らしておき、患者さんの痛みも取り除かれている必要があります。

 

また、高濃度酸素やPEEPをかけている場合には、これらからも離脱させなくてはいけません。
高濃度酸素の投与が行われている場合には、できる限り酸素濃度を減らし、FiO2 0.40以下にしておく必要があります。高いPEEPに関しては、徐々に下げていきます。1日に2cm程度、1日1〜2回の速度で減らしていくのが安全であるといわれています。

 

ウィーニング4つの方法

それでは、具体的にどのようなウィーニング方法があるかみていきましょう。大きく分けて4つのウィーニング方法があります。

 

<オン−オフ法(on-off法、T-piece法)>
オン-オフ法とは、人工呼吸器をいきなり外し、そしてまたつけることを繰り返す方法です。
人工呼吸器を外した時には、気管チューブ内にT字型のチューブをつなぎます。そしてそのT字型のチューブから酸素を流して、自発呼吸のみとする時間を少しずつ伸ばしていきます。
オン-オフ法を行うには条件があります。それは、PEEPをかけなくてもいいような状態になっていることです。
オン-オフ法は昔からある方法です。しかし、様々な研究の結果、現在では1日1回(ないしは数回)SBTを行うオン-オフ法が、ウィーニングにかかる期間が最も短く優れた方法であるといわれています。

 

<プレッシャーサポート法(PSV法)>
プレッシャーサポート法は、プレッシャーサポート(PS)を徐々に低くしていく方法です。1日2回、圧を2〜5cmH2Oずつ下げていきます。ただし、5cmH2O程度の圧は、挿管チューブなどによる空気抵抗を相殺するために必要ですので、それ以上に下げる必要はありません。

 

<IMV法(SIMV法)>
IMV法(SIMV法)は、SIMVの回数を徐々に下げる方法です。1日2回、回数を2〜4回/分ずつ下げていきます。しかし、IMV法はウィーニングにかかる期間が長いため最近ではあまり選択されなくなっています。

 

<非侵襲的陽圧換気(NPPV)を用いる方法>
いきなり抜管し、その後はマスクによる補助換気(NPPV)を行い、徐々に自発呼吸のみにしていく方法です。早期に抜管することは、人工呼吸器関連肺炎(VAP)のリスクを減らす等、さまざまなメリットがあります。そのためこの方法は非常に優れた方法ではあります。・・・が、すべての患者さんに適応できるわけではありません。自ら痰を出すことができる(排痰できる)患者さんでなくてはいけません。
COPDなどの換気不全の患者さんのウィーニングにおいて、適応されることが多いです。

 

抜管するためには

ウィーニングを行い、患者さんが人工呼吸器から離脱できたと判断されれば、次は抜管が検討されます。しかし、必ずしもすぐに抜管ができるとは限りません。抜管ができる条件は、以下の通りです。

@気道がしっかりしていること(上気道閉塞の可能性がないこと)
A自力排痰が可能なこと
BFiO2 0.40以下、PEEP 5cmH2O以下、呼吸回数25回以下

 

ウィーニング困難について

ウィーニング困難とは、なかなか人工呼吸器から離脱できない状態を指します。
ウィーニング困難の患者さんに対して最も大切なことは、ウィーニング困難の原因を探って、その原因にしっかりと対処していくことです。

 

最初に挙げたウィーニングの開始基準を振り返る必要があります。特にICUの患者さんは水分過剰となりやすく、これがウィーニングを妨げている原因になっていることもあるため注意が必要です。

 

また、ウィーニングが検討されるほど全身状態が回復してきた患者さんに対しては、日中はなるべく覚醒させる必要もでてきます。理学療法士に協力を求めつつ、身体活動性を徐々にあげていきます。


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