代表的な鎮痛薬
このページでは、人工呼吸器使用中に使われる、代表的な鎮痛薬について説明していきます。
鎮痛薬の主流はオピオイド(麻薬系薬剤)の静脈内投与ですが、症例によってはNSAIDsや硬膜外鎮痛法も選択されます。
オピオイドの特徴
人工呼吸器使用中に用いられる代表的なオピオイドには、フェンタニルとモルヒネがあります。これらの詳細は後述していきますので、まずはオピオイドと呼ばれる薬剤の特徴を簡単に説明していきます。
オピオイド系の薬剤はただ痛みをとるだけでなく、呼吸困難感や挿管チューブの違和感などの、苦痛そのものを軽減、除去する働きがあります。また、鎮咳作用も強いです。そのため、挿管中の患者さんに使うことに適しています。
そんな便利なオピオイドですが、デメリットもあります。それは、副作用に鎮静、呼吸抑制、消化管運動抑制、掻痒感などがあることです。オピオイドによる呼吸抑制は、一回換気量が保たれているものの、呼吸回数が減少するのが特徴です。(人工呼吸器使用中の患者さんにとっては、あまり大きな問題にはならないかもしれませんが・・・)
フェンタニル
フェンタニルは、オピオイドの一種です。臨床では最も頻用される麻薬系鎮痛薬になります。
<メリット>
フェンタニルのメリットは、脂溶性が高いため、比較的作用発現が速く(1分以内)、持続時間も短い(30〜60分)ため、使用しやすい点です。また、血圧低下の副作用が少ないため、血行動態が不安定な場合にも適しています。
<デメリット>
長期投与すると、脂肪組織に蓄積して効果が得にくくなります。
メリット、デメリットそれぞれありますが、フェンタニルはほかの薬剤に比べると、持続投与に向いた薬剤であるといえます。そのため、臨床では持続投与が行われることが多いですが、PCAポンプ等を用いた間歇投与も行われます。
モルヒネ
モルヒネも、代表的なオピオイド薬です。
モルヒネの作用発現時間は5〜10分、持続時間は2〜4時間と、フェンタニルに比べて長いです。そのため、持続投与ではなく間歇投与に向いているため、しばしばPCAポンプを用いて投与されます。
モルヒネには静脈拡張作用があるため、その静脈拡張作用を利用して肺うっ血の軽減目的で使用されることもあります。
<デメリット>
ヒスタミン遊離作用のため低血圧が起こりやすいです。また、腎機能障害のある患者さんでは、効果が得にくくなることもあります。
NSAIDs
人工呼吸器使用中の鎮痛目的でのNSAIDsは、使える患者さんが限られてきます。腎機能が弱っている患者さんには、使用しないほうが無難であるといわれています。使用するとしても、腎機能への影響が比較的軽い、プロピオン系のロキソプロフェンや、プロドラッグであるスリンダグなどが適しています。
硬膜外カテーテルによる鎮痛法
硬膜外カテーテルによる鎮痛法は、鎮静作用がなく、呼吸抑制が小さいというメリットがあります。そのため、開胸術後や上腹部手術後などで選択されることがあります。この場合は、局所麻酔薬とオピオイドを混合し、持続投与やPCAによる投与が行われることが多いです。
なお、今まで説明した鎮痛薬の使用法については鎮静薬、鎮痛薬の使用法まとめに書いてありますので確認してください。
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