最高気道内圧について
最高気道内圧とは、呼吸周期の中で最も高い気道内圧のことです。英語で「peak inspiratory pressure」と表記され、「PIP」と略されます。
実は・・・そもそも、息を吸ったときに気道に圧力がかかる状態って、本当はすごく不自然な状態なのです。
普通の呼吸では、私たちは息を吸うとき、呼吸筋を使って胸腔内のスペースを広げることで、肺を膨らませています。このとき、胸腔内は「陰圧」になっています。
しかし、人工呼吸器による呼吸は、空気を機械で無理やり送り込むことによって肺を膨らませる呼吸なのです。これは「陽圧換気」とよばれます。
人工呼吸器による陽圧換気は本当はとても不自然な呼吸です。気道に圧力がかかる状態というのも自然ではありえないことです。なので、圧力をかけすぎないよう、圧を適切に保つ必要があります。
40cmH2Oを超える圧がかかってしまうと、圧外傷を引き起こす可能性があるため要注意といわれています。
最高気道内圧(PIP)を高めてしまう3つの原因
それでは、最高気道内圧(PIP)を高めてしまう・・・すなわち、気道に圧がかかりすぎてしまう状態はどんな時に起きるのか、みていきましょう。大きく分けて3つの原因があります。
@患者側の原因
患者側の原因としては、以下の状態になっていることがあげられます。
・気道抵抗が強い状態(気管支が細い、淡が貯留している等)
・コンプライアンスが悪い(肺が硬く、なかなか膨らまない)
A呼吸器側の原因
人工呼吸器側の原因としては、以下の状態になっていることがあげられます。
・一回換気量(VT)が多すぎる(一回換気量(VT)が多ければ多いほど、送り込まれる空気の量も増えるため、圧が高くなる)
・呼気流速が速すぎる(呼気流速(PF)が速いほど、圧は高くなる)
B患者側、呼吸器側、両方の原因
これは、主に自発呼吸のある患者さんに起こり得ます。
・ファイティング
ファイティングは英語であらわすとfinghting、すなわち「戦い」を意味します。患者さんの呼吸のタイミングと呼吸器の換気のタイミングが合わないと、一時的に最高気道内圧(PIP)が高まってしまうことがあります。
・バッキング
バッキングは英語であらわすとbuckingです。buckingには、「跳ね上がる」といった意味があります。バッキングとは、患者さんが激しくせき込む跳ね上がる様子のことです。痰が貯留したときや、刺激が加わって咳をしたときに起こります。
最高気道内圧(PIP)の高くなるパターン別対処法
一口に「最高気道内圧(PIP)が高くなる」といっても、急激に高まる場合、じわじわ少しずつ高まる場合・・・と、様々なパターンがあります。そして、そのパターンによって考えられる原因も異なってきます。
順にみていきましょう。
・PIPがずーっと高い状態をキープしているとき
PIPの値がずーっと常に高い時は、急激に何かのトラブルが発生した!!・・・というよりはむしろ、呼吸器の設定を見直した方がよい時です。
一回換気量(VT)や吸気流速(PF)、人工呼吸器のモード(後述します)を見直しましょう。
・急にPIPが高くなったとき
さっきまでは何にもなかったのに、急にぽーんとPIPが高くなってアラームが鳴った時には、淡の貯留、ファイティング、バッキングなどが考えられます。
原因が痰の貯留と考えられる場合には吸引を行います。ファイティングによって一時的にPIPが高くなってしまっている時には、トリガー感度や吸気時間(TI)等の設定の見直しを行いましょう。
・じわじわとPIPが高くなっていくとき
少しずつ、すこーしずつPIPが高くなっている場合には、コンプライアンスの低下を疑いましょう。
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