CMV 〜A/C アシストコントロール〜
人工呼吸器3つのモードのうち、まずはCMV(continuous mandatory ventilation:持続強制換気)についてお話していきます。
※ちなみにCMVの英語表記ですが・・・機種によっては、controlled mechanical ventilation(機械によってコントロールされた換気)でCMVとあらわしている場合もありますが、意味は同じです。
CMVはざっくりいうと、すべての呼吸サイクルで、呼吸器に設定された呼吸(強制換気)を行うモードです。人工呼吸器3つのモードであるCMV、SIMV、CSVの中で、最も人工呼吸器がコントロールする割合が多いです。そのため、患者さんに自発呼吸がほとんど見られない場合に用いられます。
そんなCMVですが・・・現実的には、患者さんの呼吸を完全に無視して強制換気だけを行うようなことはありません。もし患者さんに少しでも自発呼吸があった場合、それを完全無視して強制換気だけを行うことは患者さんにとって負担だからです。
基本的には呼吸器に設定された換気(強制換気)を行うけれども、患者さんに自発呼吸があった場合にはそのタイミングに合わせて換気してあげたい。
そんな声に答えて開発されたのが「A/C(アシストコントロール)」です。
A/C(アシストコントロール)の「A」「C」ってなに?
まず、A/C(アシストコントロール)モードの「A(Assistアシスト)」と「C(controlコントロール)」とはそれぞれ何を指しているかみていきましょう。
A(Assistアシスト)は、「補助換気」という意味をもちます。患者さんに自発呼吸があった場合、換気を始めるタイミングは患者さんに合わせるという換気方法です。トリガー(患者さんの自発呼吸を感知する機能)を設定し、トリガーが患者さんの自発呼吸を感知したその時に、呼吸器に設定された換気(強制換気)が行われます。
一方C(controlコントロール)は、「調整換気」という意味を持ちます。これは、換気を始めるタイミングを機械が決める換気方法です。患者さんが自発呼吸をしなければ、呼吸器に設定されたとおりの時間間隔で換気が行われます。
A/C(アシストコントロール)のはたらき
A/C(アシストコントロール)は、患者さんの自発呼吸がなければ「controlコントロール」、患者さんに自発呼吸があった時には「assistアシスト」としてはたらくことがわかりましたね。
A/C(アシストコントロール)のはたらき方には、特徴があります。それは、呼吸器に設定された換気回数よりも、自発呼吸が優先されるということです。たとえば、換気回数が20回/分に設定されていたとします。でも、もし自発呼吸が25回/分あった場合には、自発呼吸のタイミングと合わせて25回/分押されてしまうのです。
その結果、困ったことが起こります。換気させすぎてしまい、体の中のCO2がはけすぎてしまうのです。低CO2血症になると脳血流や冠血流が低下してしまいます。
よって、自発呼吸が多い患者さんにはA/C(アシストコントロール)は向きません。このような患者さんは、ほかのモードを選択するほうがよいでしょう。
A/C(アシストコントロール)2つのバージョン VCとPC
みなさん!VCとPCって覚えていますか?
VCとPC。これはどちらも、患者さんにどのくらいの空気を送るか決める方法です。
VCはvolume controlのことで、どのくらいの「量」の空気を患者さんに送るか決めることでした。
そしてPCはpresure controlのことで、どのくらいの「圧」をかけて空気を患者さんに送るか決めることでした。
呼吸器を設定するときには、患者さんごとに、VCにするのかPCにするのかを考えます。
A/C(アシストコントロール)モードで換気をしていくことが決定した患者さんは、空気の「量」を決めて送り込む(VC)のか、「圧」を決めて送り込むのか(PC)の選択がさなれるのです。
VCとPCでは、それぞれ特徴が異なります。
・A/C(VC)の場合
A/C(VC)の場合、換気量は一定になります。volume(一回換気量のこと)をきめて空気を吹き込んでいるのですから、そりゃそうですよね。
換気量は一定だけど、変化が出るのは「気道内圧」です。気道内圧のモニターをよく見ていると、呼吸ごとにAssistだったのか、controlだったのかわかると思います。
・A/C(PC)の場合
A/C(PC)の場合、気道内圧が一定になります。換気圧は一定だけれども、換気量は一定ではありません。
A/Cの時設定しなくてはいけない基本的パラメータ
・一回換気量(VC)または換気圧(PC)←どちらか選択
・換気回数
・換気時間またはI:E比←どちらか選択
・酸素濃度
・PEEP
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