基本設定B空気をどのくらいの「圧」で送るか 〜PC〜
人工呼吸器がどのくらいの空気を患者さん送り込むのか。それを決める方法は、全部で2つあります。
一つは、送り込む空気の量(○○ml)を決める方法。
もう一つは、送り込む空気の圧力(気道内圧を○○cmH2O)を決める方法です。
送り込む空気の量を決める方法、「従量式」に関しては基本設定A送り込む空気の「量」に書いてありますので読んでみてくださいね。
空気の「圧」を決める方法 〜従圧式〜
患者さんに吹き込まれる空気の「圧」を決める方法のことを、「従圧式」といいます。英語でpressure controlと呼ばれ、「PC」と略されます。
従圧式の場合、患者さんに送り込まれる空気の圧力(○○cmHg)を決めます。そして、吸気時間内に、設定した圧を保つように空気が送り込まれるのです。例えば、吸気時間が2秒、送り込まれる空気の圧が20cmHgと設定した場合には、空気が送り込まれている2秒間、20cmHgという圧がずっと気道にかかっていることを意味しています。
吸気圧
吸気圧は、機種により「吸気圧(VELA)」、「PC above PEEP※1(Servo i)」「圧リミット※2(ニューポートベンチレータ モデルe360)」「Pi(Puritan Bennett 840)」など様々な呼び方があります。
それぞれが指す吸気圧の意味合いも微妙に違う場合がある(下記※参照)ので、注意しましょう。
※1 PC above PEEPとは:吸気時にPEEPに上乗せする圧のこと。この値が吸気時の駆動圧(吸気時に加わる圧、すなわち吸気圧)となる。Δ(デルタ)P、driving pressureも、PC above PEEPと同じ意味。
ちなみに最高気道内圧(PIP)=ΔP+PEEP
※2 圧リミットとは:圧リミット−PEEP=PC above PEEPとなる。そのため、圧リミットを変更した場合にはPEEPを、PEEPを変更した場合には圧リミットを変更しないと、換気量が変わってしまうため注意。
立ち上がり時間について
PCを選択した場合、どのくらいの速さ(時間)で設定吸気圧に到達させるのか設定するのが、「立ち上がり時間」です。
機種によって、立ち上がりにかける時間(0.2秒など)そのものを設定する場合や、%(50%など)を設定する場合などがあり、立ち上がり時間をどのように設定するかどうかは人工呼吸器の機種によって異なります。
従圧式のメリットとデメリット
従圧式のメリットとデメリットについてみていきましょう。
・従圧式のメリット
従量式では、設定した空気の量を全部肺の中に届けようとすると、最高気道内圧(PIP)が高くなりすぎることがありました。しかし従圧式では、あらかじめ圧を決めているので必要以上にPIPがかかることはありません。
小児の場合は、肺が弱いので、肺を守るために圧がかかりすぎない従圧式が選択されることが多いです。
・従圧式のデメリット
従圧式のデメリットは、肺のコンプライアンスが悪いと(肺が硬くて膨らみにくいと)、一回換気量(VT)が低下してしまうことです。一回換気量(VT)が低下するということは、患者さんにとって必要な酸素が届けられないという可能性が出てきます。
PC換気の基本設定項目
・FiO2(酸素濃度)
・PEEP
・呼吸回数
・吸気圧
・吸気時間(I:E比)
・立ち上がり時間
・トリガー
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