鎮痛・鎮静中の原則

 

 

人工呼吸器使用中に、鎮痛・鎮静を行うことにはそれぞれメリットとデメリットがあることはなぜ人工呼吸器使用中に鎮痛・鎮静が必要かでお話ししましたね。鎮痛・鎮静を行うことで、患者さんが感じる痛みや不安感を取り除くことができるという大きなメリットがある一方、深い鎮静をかけることで人工呼吸器を使用する時間を延長してしまう等のデメリットもあります。

 

人工呼吸器を使用するときには、原則に従って行わなくてはいけません。

 

その原則は、以下の通りです。

 

1.プロトコールに従った鎮静
2.1日1回鎮静の中断または間歇投与を行う
3.筋弛緩薬はできるだけ投与しない
4.十分な鎮痛のもと鎮静は最小限に

 

詳しく見ていきましょう。

 

1.プロトコールに従った鎮静
現在最も広く使用されている鎮静スケールは、Ramsay sedation scalesedation-agitation scale(SAS)、Richmond agitation-sedation scale(RASS)の3つです。 Ramsayスケールが最も普及していますが、近年ではRASSが比較的信頼度の高いスケールとして推奨されています。

 

Ramsay sedation scale(スマートフォンの方は画面を横にしてご覧ください)

スコア

鎮静状態

不安、不穏状態

協力的、協調性があり、落ち着いている

命令にのみ反応し、globar tap(手で叩く)や大きい声に反応する

眠っているが、刺激に対してはっきり反応する

眠っており、刺激に対してのろのろした反応

無反応

 

Richmond agitation-sedation scale(RASS)(スマートフォンの方は画面を横にしてご覧ください)
ステップ1:30秒間、患者を観察する。これ(視診のみ)によりスコア0〜+4を判定する
ステップ2:
@大声で名前を呼ぶか、開眼するように言う
A10秒以上アイ・コンタクトができなければ繰り返す。以上2項目(呼びかけ刺激)によりスコア−1〜−3を判定する
B動きがみられなければ、肩をゆするか、胸骨を摩擦する。これ(身体刺激)によりスコア−4、−5を判定する。

 

スコア

用語

説明

 

+4

闘争的な 明らかに好戦的な、闘争的な、スタッフに対する差し迫った危険  

+3

非常に興奮した チューブ類またはカテーテル類を自己抜去:攻撃的な  

+2

興奮した 頻繁な非意識的な運動、人工呼吸器ファイティング  

+1

落ち着きのない 不安で絶えずそわそわしている、しかし動きは攻撃的でも活発でもない  

意識清明な、
落ち着いている

   

−1

傾眠状態 完全に清明ではないが、呼びかけに10秒以上の開眼及びアイ・コンタクトで応答する 呼びかけ刺激

−2

軽い鎮静状態 呼びかけに10秒未満のアイ・コンタクトで応答 呼びかけ刺激

−3

中等度鎮静状態 呼びかけに動きまたは開眼で応答するがアイ・コンタクトなし 呼びかけ刺激

−4

深い鎮静状態 呼びかけに無反応、しかし、身体刺激で動きまたは開眼 身体刺激

−5

昏睡 呼びかけにも身体刺激にも無反応 身体刺激

RASSスケールにおいて、理想的な鎮静度は0点、すなわち覚醒して落ち着いている状態です。プラスに傾けば興奮状態となり、マイナスに傾けば鎮静されている状態となります。
実際は、目標RASSスコアを0〜−2に鎮静を行うことが多いです。

 

また、鎮痛スケールとして人工呼吸器使用中の患者さんによく使用されているものには、behavioral pain scale(BPS)があります。

 

behavioral pain scale(BPS)(スマートフォンの方は画面を横にしてご覧ください)

項目

説明

スコア

表情 穏やかな
  一部硬い(たとえば、眉が下がっている)
  全く硬い(たとえば、瞼を閉じている)
  しかめ面
上肢 全く動かない
  一部曲げている
  指を曲げて、上肢も完全に曲げている
  ずっとひっこめている
呼吸器との同調性 同調している
  時に咳嗽、大部分は呼吸器に同調している
  呼吸器とファイティング
  呼吸器の調節がきかない

 

2.1日1回鎮静の中断または間歇投与を行う
daily sedation interruption(1日1回鎮静の中断)、sedation vacation(鎮静の休息)という言葉があります。この言葉のように、鎮静を中断したり間歇投与行うことにより、ずっと深い鎮静をかけ続けるのでなく、鎮静を浅くする時間を持つことが必要です。

 

3.筋弛緩薬はできるだけ投与しない
筋弛緩薬は、人工呼吸器患者の長期筋麻痺であるcritical illness myopathy(CIM)のリスクファクターであるため、できるだけ投与してはいけません。また、筋弛緩薬を投与された状態というのは、苦痛を表現することもできないので、苦痛の程度や睡眠の深度を判定することも不可能になってしまいます。
それでもなお筋弛緩薬を投与しなくてはいけない場合というのは、十分な鎮痛鎮静を行ったり人工呼吸器のモードを工夫しても同調が得られない場合や、頭蓋内圧の更新がコントロールできない場合、痙攣のコントロールが困難な場合などです。

 

4.十分な鎮痛のもと鎮静は最小限に
鎮痛を十分に行うことで、鎮痛が原因でせん妄が発症したり、鎮静薬を増やしたりする必要がないように心がけます。

 

現在では、鎮痛を重視し、鎮静を最小限にする鎮静・鎮痛法が主流となってきています。

 

 

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