NPPV2つのモードと呼吸器の設定
非侵襲的陽圧換気(NPPV)は、マスクで行われる陽圧換気です。
NPPVには、よく用いられる2つのモードがあります。持続気道陽圧(continuous positive airway pressure :CPAP)とbilevel positive airway pressure(bilevel PAP)です。
それぞれ見ていきましょう。
持続気道陽圧(continuous positive airway pressure :CPAP)
CPAPとは、吸気/呼気を通して常に一定の陽圧を与える呼吸器設定のことです。
CPAPでは、常に一定の圧が患者さんに与えられます。そのため、患者さんは、この一定の圧を受けながら自発呼吸を行うのです。
<CPAPが適応となる患者さん>
CPAPが適応になるのは、主に急性心不全の患者さんです。
<呼吸器の設定>
CPAPの場合は、圧とFiO2を設定します。
圧に関しては、まず5〜8cmH2Oに設定して、徐々に上げていきます。
FiO2は、患者さんの酸素飽和度を見ながら調整していきます。
bilevel positive airway pressure(bilevel PAP)
「bilevel」は、日本語に訳すと「二階層になった」という意味です。簡単に言うと、bilevel PAPとは、「二層で行われる陽圧換気」という意味になります。
それでは何が二層なのか・・・といいますと、吸気圧が二層になっているのです。高い吸気圧(inspiratory positive airway pressure :IPAP)と低い吸気圧(expiratory positive airway pressure:EPAP)を交互に与えるのが、このbilevel PAPです。
高い吸気圧(IPAP)は、吸気時に気道にかける圧力です。
そして低い吸気圧(EPAP)は、呼気時に気道に残しておく圧力のことです。
実はこのbilevel PAPという考え方・・・今まで出てきたあるモードにそっくりなんです。それは、プレッシャーサポート(PSV)です。※プレッシャーサポートについては、CSV 〜PSV〜に詳しく書いてあります。
bilevel PAPは、プレッシャーサポート(PS)+CPAPに相当します。
プレッシャーサポート(PSV)では、患者さんが呼吸の回数やらタイミングなどをぜーんぶ決めます。人工呼吸器が行うことは、患者さんが息を吸っている間だけ低めの圧をかけてあげることだけです。
bilevel PAPも、考え方としては一緒です。患者さんが息を吸い込んだ時に高い圧をかけ、息を吐いた時には低い圧をかけます。ちなみになんで息を吐いているときにも圧をかけるのかというと、肺胞がぺっちゃんこになるのを防ぐためです。この考え方、PEEPにそっくりですね。
プレッシャーサポートにおける「プレッシャーサポート圧(換気補助圧)」が、bilevel PAPではIPAPからEPAPを引いた値(IPAP-EPAP)になります。
そしてプレッシャーサポートにおける「PEEP」が、bilevel PAPではEPAPになります。
<bilevel PAPが適応となる患者さん>
基本的には、急性心不全以外の患者さんがbilevel PAPの適応になります。
<呼吸器の設定>
EPAP、IPAP、バックアップの換気回数、FiO2を設定します。EPAPは4cmH2O、IPAPは8cmH2Oから開始し、FiO2は患者さんの酸素飽和度を見ながら設定されます。バックアップの換気回数については以下の例を挙げて説明します。
例)バックアップの換気回数
バックアップの換気回数12回/分とします。このとき、患者さんの自発呼吸が5回/分であったならば、足りない6回分を呼吸器が補って吸気圧を送り込みことで12回/分の換気が行われます。
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