NPPVのメリット、デメリット

 

それではここで、なぜわざわざ通常の人工呼吸管理でなく、NPPVを使うのか考えていきましょう。NPPVを使うことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

 

NPPVを用いるメリット

通常の人工呼吸ではなくNPPVを用いる最大のメリット、それは、気管チューブによる人工呼吸の合併症を回避できることです。

 

鼻や口から気管チューブを入れることは、患者さんに痛みや不快感などの感覚を覚えさせてしまうと同時に、様々な合併症も起こしてしまいます。

 

気管チューブによる人工呼吸の合併症に関して、以下の表を確認してみてください。(スマートフォンの方は画面を横にしてご覧ください)

挿管操作に伴う合併症

・胃内容物の誤嚥
・歯、咽頭、喉頭、気道、食道の損傷
・高血圧、頻脈、不整脈
・(挿管直後の)ショック

気管チューブの存在による人工呼吸中の合併症

・気道への刺激
・吸引による損傷
・正常の気道クリアランスの低下
・患者の不快感
・気道粘膜の分泌亢進
・感染

抜管後の合併症

・嗄声
・喉の痛み
・気道分泌亢進
・気道狭窄
・血痰、声帯機能不全または咽頭浮腫

引用:羊土社 「人工呼吸管理に強くなる」 編集 讃井將満、大庭祐二 

 

気管チューブを用いるだけで、これほどの合併症がでてきてしまうのです。これらを回避できるというのは、非常に大きなメリットですね。

 

また、気管チューブを用いないことで、鎮静を行う必要性が大幅に減少するというメリットもあります。
鎮静を行わないことで、鎮静を行うことによる合併症(人工呼吸器使用時間の延長や、人工呼吸器関連肺炎(VAP)を防ぐことができる等)を避けることができるというのはもちろん、NPPV中も患者さんとコミュニケーションをとることができたり、飲食も可能になります。

 

NPPVは、患者さんにとってみれば、意識を保つこともでき、コミュニケーション・飲食も可能で、気管チューブによる合併症も回避することのできる、メリットたくさんの陽圧換気なのです。

 

NPPVのデメリット

そんないいことずくめのNPPVですが、デメリットもあります。

 

まず、確実な気道確保ができないことです。NPPVはマスクによる陽圧換気なので、どうしてもリークが多くなってしまいます。そのため、状態の安定しない患者さんには用いることができません。

 

また、気管チューブを挿入していないため、効果的な吸引を行うことが難しくなります。自分で排痰をすることのできない患者さんに対しては使うことができません。

 

さらに、食道と気道の分離ができないため、患者さんによっては誤嚥のリスクも増してしまいます。

 

 

このように、NPPVにはメリットもたくさんありますが、患者さんによってはかえって逆効果になってしまうこともあります。どのような患者さんにとってとNPPVが効果的かどうかに関してはNPPVの適応に書いてあるので参考にしてみてください。


NPPVのメリット、デメリット 関連ページ

人工呼吸器って難しいの?
人工呼吸器の仕組み
基本設定@空気をどのくらいの「時間」で送るか
基本設定A空気をどのくらいの「量」送るか 〜VC〜
基本設定B空気をどのくらいの「圧」で送るか 〜PC〜
基本設定C空気をどのくらいの「速度」で送るか
基本設定Dどのくらいの「濃度」の空気を送るか
基本設定E患者さんの肺を守る工夫〜PEEP〜
人工呼吸器3つの「モード」CMV、SIMV、CSV
CMV 〜A/C アシストコントロール〜
CSV  〜PSV〜
CSV 〜CPAP〜
SIMV
吸気を成りたたせるもの@トリガー
吸気を成りたたせるものAリミット
吸気を成り立たせるものBサイクル
最高気道内圧について
人工呼吸管理の適応基準
人工呼吸器の「加温・加湿」について
ウィーニングについて
なぜ人工呼吸器使用中に鎮痛・鎮静が必要か
鎮痛・鎮静中の原則
代表的な鎮静薬
代表的な鎮痛薬
鎮静薬、鎮痛薬の使用法まとめ
非侵襲的陽圧換気(NPPV)とは
NPPVの適応
NPPVを行うにあたって 患者さんへの説明
NPPV2つのモードと呼吸器の設定
NPPV使用中の患者さんへの看護
人工呼吸器使用中の患者さんの急変!まずは落ち着こう
DOPEの「D」 Displacement
DOPEの「O」 Obstructive
DOPEの「P」 Pneumothorax
DOPEの「E」 Equipment failure
人工呼吸器のアラームについて
無呼吸アラーム
気道内圧低下アラーム
気道内圧上昇アラーム
換気量上限アラーム
換気量低下アラーム
換気回数増加(呼吸数増加)アラーム
ガス供給アラーム
電源異常アラーム
その他のアラーム
ファイティングとバッキング
自己抜管・事故抜管
用語集

HOME このサイトについて お問い合わせ