非侵襲的陽圧換気(NPPV)とは
いままでご説明してきた人工呼吸管理は、人工気道(気管挿管や気管切開)を用いて行う
、いわば「侵襲的陽圧換気」と呼べるものでした。
一方非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)とは、文字通り「非侵襲的に」陽圧換気(人工呼吸)を行うことを指します。
それでは、どうやって人工気道を用いずに、非侵襲的に人工呼吸を行うことができるのかみていきましょう。
どうやってNPPVを行うの?
NPPVは、マスクを使って行われます。人工気道を作る代わりに、鼻や口にマスクを当てるのです。
具体的にどのような仕組みかと言いますと・・・人工呼吸器から送られてきた高い圧(陽圧)は、マスクを通って鼻や口から気道に入っていきます。そしてこの高い圧は、気道から肺へと伝わり、肺胞を押し広げてくれるのです。NPPVは、虚脱してしまった肺胞を押し広げることによって、換気を促します。また、NPPVを用いることで呼吸仕事量を減らし、呼吸に使われる筋肉を休ませることもできるのです。
NPPVは、ただマスクを口や鼻に密着させるだけのため、どうしてもリーク(空気漏れ)が起こります。通常の人工呼吸器ではリークはなくて当たり前ですが、NPPVの場合にはリークが起こりうる、というのは通常の人工呼吸管理と異なる点です。
NPPVマスクの種類
NPPVには、鼻マスク、鼻と口を覆うフェイスマスク、顔全体を覆うフルフェイスマスク、ヘルメット型マスクなどいろいろな種類があります。それぞれの特徴をみていきましょう。
<鼻マスク>
○メリット
・患者さんの使い心地が良い
○デメリット
・口呼吸をしている患者さんだとリークが多くなる
・急性呼吸不全の患者さんに対しては、安定した人工呼吸を行うのに向いていない。
・鼻に強い圧がかかるため、潰瘍ができることがある
○適応
・長期使用の場合
・鼻呼吸が可能な患者
○鼻マスクのサイズの選定方法
・鼻孔が挟まったり、閉塞せず、フィットするサイズを選ぶ
・迷ったら、小さめを選ぶ
・適度にフィットしているか、機械をスタートさせて確認する
○備考
・装着したまま、飲食、会話も可能。ただし、誤嚥に注意
・口が閉じられない場合は、チンストラップなどを用いる
<鼻口マスク(鼻口フェイスマスク)>
○メリット
・鼻マスクに比べてリークが少なく、より効果的な陽圧換気が可能
○デメリット
・このマスクを使用している間は話すこと、食べることが困難になる
・鼻に強い圧がかかるため、潰瘍ができることがある
○適応
・鼻閉のある場合
・口呼吸をしている場合
・口を閉じられない場合
○鼻口マスクのサイズの選定
・口の周りにフィットする最小のサイズを選ぶ(顎の下にマスクが落ちないもの)
・睡眠中に口が開いても唇がはみ出さない
・目に当たらない
・鼻孔が挟まったり、閉塞しない
・最後に横になった状態でフィットする
○備考
・救急では、第一選択となる場合が多い。
<フルフェイスマスク>
○メリット
リークが少なくて済む
○デメリット
・このマスクを使用している間は話すこと、食べることが困難になる
・閉所恐怖症の患者は、強い閉塞感を感じ、使用に耐えられないことがある
○適応
・鼻マスクや鼻口マスクが合いにくい場合
・皮膚トラブルがある場合
○備考
・救急時にフィッティングが可能
・顔の小さな患者ではサイズが合わないことがある
<ヘルメット型マスク>
○メリット
フェイスマスクより、患者さんにとっては使いやすい
○デメリット
・呼吸器との同調性が悪化しやすい
・死腔が大きくなり、患者さんが自分の呼気を吸ってしまう再呼吸が起こりやすく、効率の良い換気を行うことができない
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