SIMV
人工呼吸器3つのモード(CMV,SIMV,CSV)のうち、最も人工呼吸器の力を頼るのがCMV、そして最も患者さんの力を生かすのがCSVでした。SIMVは、その中間に位置しています。強制換気(人工呼吸器に設定された換気)と自発換気の間を行き来できるモードです。
SIMVとは?
SIMVは、synchronized intermittent mandatory ventilationの略語です。日本語では「同期式間欠的強制換気」となります。また長ったらしいアルファベットと漢字がでてきましたね。
ぶった切って説明すると・・・まずsynchronized(同期式)は、「強制換気の吸気相を開始する時点を、患者の呼吸努力に同期させる」、つまり、強制換気をするときには患者さんが息を吸うタイミングに合わせて空気を送り込みますよ、という意味になります。そしてintermittent(間欠的)は、「一部の換気相は強制換気で、残りの換気相は自発呼吸」と、強制換気と自発換気が行き来できることを指します。mandatory ventilation(強制換気)は、機械に決められた換気パターン(VCかPC)で換気が行われるという意味です。
自発呼吸回数が、SIMVの設定呼吸回数と同じか、もしくは少ない時(自発呼吸回数≦SIMVの設定呼吸回数)は、すべて強制換気になります。
たとえば自発呼吸が15回でSIMVの設定呼吸回数が20回だったなら、自発呼吸の15回分は患者さんが息を吸うタイミングに合わせて空気が送り込まれる強制換気で、残りのSIMV設定分の5回は呼吸器がタイミングを決めた強制換気となります。
まあ、この場合はいずれにせよ、強制換気が行われるということです。
一方、自発呼吸回数が、SIMVの設定呼吸回数よりも多い時(自発呼吸回数>SIMVの設定呼吸回数)は、呼吸器は設定回数分しか換気を行わず、あとは自由な自発呼吸となります。
たとえば自発呼吸が25回でSIMVの設定呼吸回数が20回だったなら、自発呼吸のうち20回分は患者さんが息を吸うタイミングに合わせて空気が送り込まれる強制換気で、残り5回の自発呼吸分は患者さんが自由に行う自発呼吸となります。
とはいっても、人工呼吸器でSIMVを使っている患者さんの多くは、自分ではなかなか十分な自発呼吸ができません。そのため、PS(プレッシャーサポート)をかけて換気を補助するような仕組みがとられることが多いです。
A/CとSIMVの違い
最も呼吸器の力に頼るのがCMVモード。そしてCMVモードが実際に使われるときは、A/C(アシストコントロール)モードとして使われることが多いのでしたね。詳細は「CMV」を確認してみてください。
A/Cモードは、患者さんンが換気のタイミングを決める「アシスト」と機械が換気のタイミングを決める「コントロール」を併せ持ったモードのことでした。
ではA/CとSIMVはどう違うのかというと・・・設定回数よりも自発呼吸が少ない場合には、ほとんど変わりありません。どちらも、患者さんの吸気に合わせて換気を行い、患者さんの自発呼吸がない時には機会に設定された間隔で換気が行われます。
しかし、設定回数よりも自発呼吸が多い場合には、違いが現れます。A/Cの場合、呼吸器に設定された呼吸回数よりも自発呼吸による呼吸回数のほうが優先されてしまうという特徴があります。そのため、もし自発呼吸が多かったら、その分強制換気されてしまう回数も増え、過換気になってしまう恐れがあるのです。
この場合SIMVではどうなるのかというと、呼吸器が設定された呼吸回数のみを強制換気し、ほかの呼吸は患者さんの自由な自発呼吸となります。
よって、自発呼吸のほうが多い患者さんは、A/Cは避けたほうがよいでしょう。
SIMVの時、設定しなくてはいけない基本的なパラメータ
SIMVでは、強制換気のパラメータと、自発呼吸のパラメータ、この2つを設定しなくてはなりません。
強制換気:
○ VCかPCかの選択
・VCの場合、一回換気量。PCの場合、換気圧。
・換気回数
・吸気時間もしくはI:E比
自発呼吸(PS):
・PS圧
・酸素濃度
・PEEP
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