なぜ人工呼吸器使用中に鎮痛・鎮静が必要か
ここからは、人工呼吸器を使うにあたって切っては切り離せない、鎮痛と鎮静についてお話していきます。
はじめに、なぜ人工呼吸器を使用するときには鎮痛・鎮静が必要なのか考えていきましょう。
鎮痛・鎮静はなぜするのか
想像してみてください。もしあなたが口の中にチューブを入れられて、機械によって強制的に空気を送り込まれていたらどうでしょうか?しかも、あなたのいる部屋は昼も夜も電気がつけられていて、機械音やアラーム音のしている環境だったら・・・
咽頭や喉頭という敏感なところにチューブが入れられている違和感や、呼吸がコントロールされる不安感、不快感、そして周辺環境からのストレスは相当なものだと想像されますよね。
しかし、人工呼吸器を使用する患者さんは、そのようなつらい状態に身を置いてでも呼吸器を使用しなければならず、その状況に適応しなければいけない環境におかれています。
人工呼吸器使用中に鎮痛・鎮静を行う理由。それは、人工呼吸器を使用する患者さんが、呼吸器や自分の置かれている状況に適応するのをサポートするためなのです。
鎮痛・鎮静を行うことのメリット
人工呼吸器を使用している患者さんは、いろいろな痛みにさらされています。外傷、手術による傷、気管チューブ、ドレーン、はたまた吸引等の処置など・・・
また、昼も夜も区別がつかないような室内や、騒音、騒がしい環境は、大変なストレスになります。そしてそれらのストレスは、患者さんの自律神経や内分泌系にも影響を与えるため、ひいては呼吸や循環などの重要な機能にも悪影響をきたしてしまうことがあります。鎮痛・鎮静は、それを行うことで患者さんの快適性と安全性を確保することができます。適切な鎮痛・鎮静を行うことで、酸素消費量が減少し、鎮痛による換気制限が解除され、換気量低下に伴う合併症を減らすことができます。先に挙げた重要な臓器への悪影響も減らすことができるのです。
鎮痛・鎮静を行うことのデメリット
メリットがたくさんある鎮痛・鎮静ですが、一方ではデメリットもあります。それは、深い鎮静をかけることで人工呼吸時間を延長させてしまうことや、長時間の人工呼吸時間が人工呼吸器関連肺炎(VAP)や人工呼吸器誘発性肺障害のリスクを上昇させることなどです。また、鎮静薬を使用することでICUにおける記憶障害、せん妄、PTSDを引き起こすことがあるともいわれています。
そのため、鎮痛・鎮静を行うときには、正しい知識を持ったうえでしっかりアセスメントをしながわ行わくなくてはなりません。
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