代謝性アシドーシス その2

 

代謝性アシドーシスは、大きく分けて2パターンの原因によって引き起こされるのでしたね。
一つは、「重炭酸イオンHCO3−が失われ過ぎてしまった場合」、そしてもう一つは、「水素イオンH+が体に溜まりすぎてしまった場合」でした。
先ほどのページ代謝性アシドーシス その1では、「重炭酸イオンHCO3−が失われ過ぎてしまった場合」について説明しました。まだ読んでいない方は、先にこちらからお読みください。

 

このページでは、もう一つの原因である、「水素イオンH+が体に溜まりすぎてしまった場合」について説明していきます。

 

機序A 水素イオンH+が体に溜まりすぎてしまった場合

酸である水素イオンH+が体に溜まりすぎてしまうシチュエーション、とはどのようなものがあるでしょうか?
大きく分けて2つあります。

 

@酸がつくられ過ぎてしまう場合
A酸が体の外に出ていかない場合

 

それでは順にみていきましょう。

 

@酸がつくられ過ぎてしまう場合
突然ですが、「ミトコンドリア」って何だか覚えていますか?
「なんでいきなりややこしいものを!」・・・と思われた方も多いかと思いますが、しばしおつきあいくださいね!

 

ミトコンドリアとは、簡単に言うと「エネルギー発生装置」です。細胞の中にあるとーーーっても小さな器官なのですが、この小さな小さなミトコンドリアの中で、私たちが食べたもの(炭水化物、脂質など)はエネルギーに変換されているのです。

 

エネルギーを作り出すためには、炭水化物や脂質が代謝される過程で作られる水素イオンH+が、酸素O2と反応することが必要です。水素イオンH+と酸素O2が反応してはじめて、エネルギーは生み出されるのです。

 

ここで、もし細胞・・・すなわちミトコンドリアに酸素がいきわたらなかったらどうなるのでしょうか?エネルギーをつくりだすためには水素イオンH+を酸素O2が反応しなくてはいけないので、エネルギーがつくられなくなってしまいます。そして、余った水素イオンH+が大量に放出されます。

 

酸である水素イオンH+が大量放出されることで、体は酸性に、つまりアシドーシスの状態になってしまうのです。
ちなみにこの状態は、放置すると短時間で死に至るとっても危険な状態です。

 

上記に挙げた原因のほかに、酸がつくられ過ぎてしまうシチュエーションとして挙げられるのが、酸の過剰摂取です。酸の誤嚥による中毒や、一部のアミノ酸輸液製剤の過剰投与によっておこります。

 

A酸が体の外に出ていかない場合
腎不全などにより腎臓から酸である水素イオンH+が排出されないと、体の中に酸がたまりアシドーシスになります。
このとき体の中では、以下のような反応が起こっています。

 

CO2(二酸化炭素) + H2O(水) ← H2CO3(炭酸)  HCO3−(重炭酸イオン) + H+(水素イオン)

 

矢印の方向は、左←です。

 

腎臓からうまく水素イオンH+が排出されないと、水素イオンH+はどんどん溜まっていいきます。そのため、どうにか増えすぎた水素イオンH+を減らそうと、体の中では、重炭酸イオンHCO3−と水素イオンH+を合成させて二酸化炭素CO2にしてしまおうという働きがうまれます。二酸化炭素という形にさえなってしまえば、肺から排出させることができるからです。

 

代謝性アシドーシスを引き起こす疾患

原因が @重炭酸イオンHCO3−が失われ過ぎてしまった場合 の疾患
尿細管性アシドーシス、下痢

 

原因が A水素イオンH+が体に溜まりすぎてしまった場合 の疾患
酸の誤飲による中毒、ショックに伴う乳酸の酸性

 

血液検査データ

正常値

 

PaO2(酸素分圧):80〜100 mmHg
PaCO2(二酸化炭素分圧):35〜45 mmHg
pH:7.35〜7.45
HCO3−:22〜26 mEq/L

代謝性アシドーシスでは、血液ガスの結果は以下のようになります。

 

HCO3−<22mmHg(重炭酸イオンHCO3−が失われるため、または体に溜まりすぎた酸を中和するためにどんどんと消費され、重炭酸イオンHCO3−は減少します。)
pH<7.35(酸である水素イオンH+が体に溜まるため、体は酸性になります。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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