代謝性調節が障害された場合
呼吸がうまくいかなくなることで起こるpHの変化には、「呼吸性アシドーシス」「呼吸性アルカローシス」があるということはわかりましたね。
それでは次に、呼吸以外の原因で起こるpHの変化についてみていきましょう。呼吸以外の原因で体が酸性に傾く「代謝性アシドーシス」と、呼吸以外の原因で体がアルカリ性に傾く「代謝性アルカローシス」があります。
代謝性アシドーシス その1
病態
代謝性アシドーシスは、呼吸以外の原因で体が酸性に傾きすぎてしまった病態です。
代謝性アシドーシスは、大きく分けて2パターンの原因によって引き起こされます。
一つは、重炭酸イオンHCO3−が失われ過ぎてしまった場合、そしてもう一つは、水素イオンH+が体に溜まりすぎてしまった場合です。
それではそれぞれみていきましょう。
機序@ 重炭酸イオンHCO3−が失われ過ぎてしまった場合
まずは、重炭酸イオンHCO3−について軽く復習します。詳しくは酸塩基平衡 in 腎臓に書いてあるので、まだ見ていない方はご確認ください。
塩基である重炭酸イオンHCO3−は、水素イオンH+を中和させて、体がpH7.35-7.45の狭ーい範囲を保つことができるように調整してくれるものでしたね。
また、重炭酸イオンHCO3−は腎臓から再吸収されるという性質もありました。
それでは、重炭酸イオンHCO3−が失われ過ぎてしまうシチュエーションとはどのようなものがあるのでしょう。大きく分けて2つあります。
@腎臓で再吸収されなくなってしまった場合
A消化管から体外に排出され過ぎてしまった場合
以上の2つです。
それでは順にみていきましょう。
@腎臓で再吸収されなくなってしまった場合
腎臓で重炭酸イオンHCO3−が再吸収されなくなってしまうと、尿の中にどんどん重炭酸イオンHCO3−が出ていってしまいます。その結果、体の中の重炭酸イオンHCO3−が失われてしまうのです。
体の中でどのような反応がおきているかみてみると、
CO2(二酸化炭素) + H2O(水) → H2CO3(炭酸) → HCO3−(重炭酸イオン) + H+(水素イオン)
矢印は→です。
重炭酸イオンHCO3−がどんどん失われていくために、体の中では、これは大変!と二酸化炭素CO2がどんどん分解され、重炭酸イオンHCO3−と水素イオンH+をどうにか増やそうとします。
その結果、塩基である重炭酸イオンHCO3−が減り続けているにも関わらず酸である水素イオンH+が増え続けるので、体は酸性に傾き、アシドーシスになるのです。
ちなみに、腎臓で再吸収されなくなってしまったがために起こるアシドーシスのことを、代謝性アシドーシスの中でも特に「尿細管性アシドーシス」といいます。
A消化管から体外に排出され過ぎてしまった場合
二つ目のシチュエーションは、下痢などによって体の外に重炭酸イオンHCO3−が排出され過ぎてしまった場合です。
この場合も、体の中でどのような反応が起こっているかどうかに関しては、@腎臓で再吸収されなくなってしまった場合と同様です。
塩基である重炭酸イオンHCO3−が減り続けているにも関わらず酸である水素イオンH+が増え続けるので、体は酸性に傾き、アシドーシスになるのです。
代謝性アシドーシスが起こる原因の一つ、「重炭酸イオンHCO3−が失われ過ぎてしまった場合」に関してはわかりましたでしょうか?
それでは次のページ代謝性アシドーシス その2で、代謝性アシドーシスの原因のもう一つの原因である、「水素イオンH+が体に溜まりすぎてしまった場合」について考えていきましょう。
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