代償反応とは?

 

目的A酸塩基平衡の評価 その2では、酸塩基平衡の評価をするために、血液ガスのデータをどのように追っていけばよいかみてきました。
簡単に振り返りましょう。

 

酸塩基平衡の評価で見るべき項目は、PaCO2、pH、HCO3−(またはBE)

 

読み解く順番は、

 

@酸塩基平衡は順調?
 Aアシドーシス?アルカローシス?
 B呼吸性?代謝性?はたまた混合性?

 

で、各項目をみていけばいいのでしたね。

 

「ふぅ。これで血液ガスの酸塩基平衡の評価ができるようになったぞー!」・・・と思ったあなた。残念でした。実はもう一つ、チェックしなくてはいけない点があったのです。

 

それは、「代償反応があるか否か」です。

 

代償反応とは?

体はどのようにして酸塩基のバランスを保っているのか、ということについては、重炭酸緩衝系酸塩基平衡 in 肺酸塩基平衡 in 腎臓
のところで説明しましたね。

 

体の中でどんどん作られている酸は、体の外に出されなければなりません。酸の出口は大きく分けて2つ。肺と、腎臓です。二酸化炭素などの揮発酸(蒸発しやすい酸)は肺から、硫酸やリン酸などの不揮発酸(蒸発しにくい酸)は腎臓から排出されます。肺、腎臓がそれぞれ元気な時には、それぞれが機能して特に問題はなく酸が排出されていきます。

 

しかし、もしも肺がうまく機能しなくなったら?腎臓がうまく機能しなくなったら・・・?

 

肺がうまく機能しなくなったら、二酸化炭素はどんどん体に溜まっていってしまいます。腎臓がうまく機能しなくなったら、硫酸やリン酸(これらは水素イオンH+という形で排出されます)がどんどん体に溜まっていきます。このままでは、じきに体が酸性に傾きすぎてしまい、大変危険な状況に陥ってしまいます。

 

ここで登場するのが「代償反応
代償反応とは、簡単に言うと、腎臓と肺がお互いの機能を補い合う反応のことです。
この時体の中で何が起きているか、化学反応式で確認しましょう。

 

仮に肺が機能しなくなった場合、ほおっておけば二酸化炭素はどんどんたまります。
そこで、体は、二酸化炭素を分解して水素イオンH+にすることで、肺の代わりに腎臓から酸を排出しようとします。

 

CO2 + H2O → H2CO3 → HCO3− + H+

 

矢印は右→です。これが、「腎臓による代償作用」です。

 

では、腎臓が機能しなくなった場合はどうなるのでしょう。腎臓から尿として水素イオンH+を排出することができないため、水素イオンH+を二酸化炭素に変化させることで肺から排出しようとします。

 

CO2 + H2O ← H2CO3 ← HCO3− + H+

 

矢印は左←です。これが「肺による代償作用」です。

 

なお・・・今回はわかりやすくするために、それぞれの代償反応が起こる原因を「肺が機能しなくなった場合」「腎臓が機能しなくなった場合」と記載しましたが、実際には二酸化炭素や水素イオンが溜まってしまう原因はほかにもあります。

 

それらについては、アシドーシスとアルカローシスのページをご確認ください。



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