11. 呼吸性アシドーシス

 

 

呼吸がうまくいかなくなってpHに変化が起きる場合には、2パターンあります。

 

呼吸がうまくいかなくなることにより、体が酸性に傾く「呼吸性アシドーシス」と、体がアルカリ性に傾く「呼吸性アルカローシス」です。

 

それぞれ順にみていきましょう。

 

呼吸性アシドーシス

 

病態

 

呼吸性アシドーシスとは、呼吸がうまくできなくなるために、二酸化炭素CO2が体の中にたまり、体が酸性に傾きすぎてしまった状態です。

 

理解を簡単にするため、例の化学反応式を思い出しましょう。

 

CO2(二酸化炭素) + H2O(水) ⇔ H2CO3(炭酸) ⇔ HCO3−(重炭酸イオン) + H+(水素イオン)

 

この化学反応式における「酸」は、二酸化炭素CO2と水素イオンH+でしたね。そして、肺が排出を担当しているのは「揮発性(蒸発しやすい)の酸」である二酸化炭素CO2でした。

 

つまり、呼吸性アシドーシスとは、酸である二酸化炭素CO2がうまく排出できなくなった状態です。酸が体に溜まるので、体の中が酸性に、つまりアシドーシスの状態になるのです。

 

機序

 

呼吸性アシドーシスでは、何らかの原因でガス交換がうまくいかなくなるために、動脈血中の二酸化炭素の量(二酸化炭素分圧PaCO2)が上昇します。動脈血中の二酸化炭素が増えると、体の中では以下の化学反応式がおこります。

 

CO2(二酸化炭素) + H2O(水) → H2CO3(炭酸) → HCO3−(重炭酸イオン) + H+(水素イオン)

 

矢印の方向は、右→です。

 

溜まりすぎてしまった二酸化炭素をどうにか分解しようと、右方向への化学反応がおこります。その結果、水素イオンH+と重炭酸イオンHCO3−が増えていきます。

 

呼吸性アシドーシスの原因

 

体の中に二酸化炭素が溜まることで起きる、呼吸性アシドーシス。その原因はずばり、呼吸が行われる流れのどこかに障害が起きたことによります。

 

呼吸は、@呼吸中枢(延髄)→A神経→B筋肉→C胸郭→D肺という流れで繰り返されていきます。この流れのどこかに障害が起きたからこそ、呼吸性アシドーシスになるのです。

 

具体的な疾患の例をいくつか挙げていきます。

 

@呼吸中枢(延髄)で障害が起きた場合

 

呼吸のリズムを作る呼吸中枢が障害されると、そもそも呼吸のリズムがつくられなくなってしまいます。原因は、脳死、脳炎、脳幹出血、代謝性脳症、薬物などがあります。

 

A神経に障害が起きた場合

 

呼吸中枢からの指令を筋肉に伝える脊髄、横隔神経、神経節接合部(末梢神経が骨格筋に刺激を伝える場所)に障害が起きると、指令がうまく伝わりません。原因は、外傷、腫瘍、ALS(筋萎縮症側索硬化症)、重症筋無力症、フグ中毒、ボツリヌス中毒などがあります。

 

B筋肉に障害が起きた場合

 

呼吸に使われる筋肉、すなわち横隔膜の障害です。筋ジストロフィーなどが考えられます。

 

C胸郭に障害が起きた場合

 

胸郭、胸腔内に障害が起きてしまった場合、肺がうまく膨らむことができずに、換気がうまくできなくなります。肋骨の骨折が原因の動揺胸郭(flail chest)、気胸、供水、横隔膜ヘルニアなどがあります。

 

D肺に障害が起きた場合

 

肺に疾患がある場合や、気道に障害が起きている場合などです。肺炎、肺線維症、腫瘍や異物による上気道閉塞、睡眠時無呼吸症候群、喘息などがあります。

 

○その他

 

人工呼吸器の設定が不適切である場合にも、CO2が体に溜まってしまうことがあります。

 

血液検査データ

 

それでは、呼吸性アシドーシスの血液検査データの見方について説明していきます。まずは、血液検査の正常値のおさらいです。

 

正常値

 

PaO2(酸素分圧) : 80〜100 mmHg

 

PaCO2(二酸化炭素分圧) : 35〜45 mmHg

 

pH : 7.35〜7.45

 

HCO3− : 22〜26 mEq/L

 

呼吸性アシドーシスでは、血液ガスの結果は以下のようになります。

 

PaCO2 > 45mmHg (二酸化炭素が体に溜まるため、二酸化炭素の量を示す二酸化炭素分圧PaCO2が上昇します 

 

pH < 7.35 (酸である二酸化炭素が体に溜まるため、体は酸性になります。)

 

 

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