BEってなに?
「BE」って何なのでしょう?なじみの薄い言葉なので、それだけで苦手意識を持ってしまいそうですね。
でもこの指標、実は私たちが酸塩基平衡を評価するのを手伝ってくれる、とってもありがたい指標なんですよ。
BEは何の略?
まず、BEとは一体全体何の略なのかみていきましょう。
BEとは、Base Excess(ベースエクセス)の略です。ベースエクセスを日本語に直すと、「base=塩基(塩基は、英語で基(もと)という意味のbaseといいます) excess=余剰」つまり、塩基余剰という意味です。
重炭酸イオンHCO3−の基準値はあてにならない!?
塩基余剰=ベースエクセスの正体は一体全体何でしょうか?
実は、ベースエクセスを理解するうえで欠かせないのが重炭酸イオンHCO3−の存在です。
例の化学反応式を思い出しましょう。
CO2 + H2O ⇔ H2CO3 ⇔ H+ + HCO3−
この化学反応式は、酸である二酸化炭素CO2が、体の中で水素イオンH+と重炭酸イオンHCO3−に変化する化学反応式でしたね。
重炭酸イオンHCO3−は水素イオンH+を中和する働きを持っています。
二酸化炭素CO2が増えれば増えるほど、水素イオンH+も増えて、重炭酸イオンHCO3−も増えていきます。反対に、二酸化炭素CO2が少ない時は、水素イオンH+も少なくなり、重炭酸イオンHCO3−も少なくなります。この部分について詳しく知りたい方は、重炭酸緩衝系、重炭酸緩衝系:例を見ながら考えるを参照してくださいね。
なぜ今この話をしたかといいますと、実は、重炭酸イオンHCO3−の基準値はPaCO2の値によって変化するのです。PaCO2が高いほど、重炭酸イオンHCO3−の基準値も高くなります。それもそうですよね。そもそも重炭酸イオンHCO3−は、体の中で酸の数に合わせて増えたり減ったりしている、調整役のような・・・いわば都合のよい存在なのですから。
よく言われている重炭酸イオンHCO3−の基準値22〜26mEq/Lというのは、PaCO2=40Torrの時に限る、という条件付きの基準値だったのです。
とっても便利なベースエクセス
重炭酸イオンHCO3−は、実はPaCO2=40Torrの時に限る、条件付きの基準値だったということはわかりましたね。これでは、もし検査をしてPaCO2が40ではなかった場合、重炭酸イオンHCO3−の正しい値を知ることは困難になります。
そこで、頭のいい人が、「では、重炭酸イオンHCO3−の正しい値が即座にわかるように、取った検体のPaCO2を40ってことにする新しい項目を設けよう!」と思いつきました。
それが、ベースエクセスです。
ベースエクセスの基準は、-2〜+2mEq/Lです。
PaCO2=40Torrの時に、HCO3−が24mEq/Lだった時の値をBE=0mEq/Lという基準にしています。
PaCO2=40Torrの時
HCO3− 22 mEq/L → BE −2 mEq/L
HCO3− 24 mEq/L → BE 0 mEq/L
HCO3− 26 mEq/L → BE +2 mEq/L
簡単に言うと、ベースエクセスがプラスに傾けば傾くほど重炭酸イオンHCO3−の数は多く、マイナスに傾けば傾くほど重炭酸イオンHCO3−の数は少ない、ということになります。
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