体の中で常につくられている「酸」

 

私たちが元気に活動するためには、酸と塩基のバランスを保たなくてはいけないということはわかりましたね。しかも、pH 7.35-7.45というせまーい範囲で保たなくてはならないことに改めて驚いた人もいたかと思います。

 

それでは、酸・塩基のバランスが崩れる一番の理由は何でしょう。
それは、体の中で酸が常につくられているからです。体の中で常に酸がつくられているので、私たちは酸を一生懸命外に出さなくてはいけないわけです。

 

どのように酸はつくられているのか?

私たちが生きていくために、エネルギーは欠かせません。そしてそのエネルギーを生み出す元が、タンパク質、糖質、脂質などの栄養素なのですが・・・実はこれらの栄養素を代謝したときに、酸がつくられるのです。つくられた酸は、大きく分けて2種類あります。揮発性(蒸発しやすい)の酸」と「不揮発性(蒸発しにくい)の酸です。揮発性の酸には、二酸化炭素(CO2)不揮発性の酸には硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)などがあります。


二酸化炭素が酸?イメージしにくいですよね。
ここで、なぜ二酸化炭素が「酸」の仲間に入るのかわかりやすく説明します。

 

なぜ二酸化炭素は酸なのか

先ほどのページで酸と塩基の定義について確認しましたね。

酸:水素イオンH+を放出する物質のこと

塩基:水素イオンH+を受け取る物質のこと

「酸」の仲間に入るものたちには、ある2つの特徴があります。一つは、「○○酸」という名前であることが多いということ。たとえば硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)。これらの物質にも、もれなく「酸」がついていますね。
そしてもう一つは、水素イオンH+をもっていること。硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)の化学式を見てみてください。水素イオンH+がちゃんとくっついていますね。

 

ではなぜ二酸化炭素は水素イオンH+がないのに酸の仲間に入るのでしょうか。

 

それは、酸の仲間に入るかどうかは、水に溶けた時の状態で判断されるからです。水に溶かしたときに、水素イオンH+が放出されていれば、その物質は酸なのです。

 

では二酸化炭素を水に溶かした時の化学反応式をみてみましょう。

 

CO2(二酸化炭素) + H2O(水) ⇔ H2CO3(炭酸) ⇔ HCO3− (重炭酸イオン) + H+(水素イオン)

 

(解説:二酸化炭素を水に溶かすと、炭酸(シュワシュワのあれです)になり、そこから重炭酸イオンと水素イオンに分かれる。ちなみになぜこの式のやじるしは双方向⇔になっているかというと、二酸化炭素は体の中で、水素イオンになってみたり二酸化炭素になってみたり、その時の状況に応じて臨機応変に姿を変えているから。)

 

これでわかりましたね!二酸化炭素は水にとけると、水素イオンH+を放出しています。
そのため、二酸化炭素は酸なのです。

 

ちなみに今出てきた化学反応式、これから重炭酸緩衝系を理解するうえでとーっても大事な式になります。
化学が苦手なあなたも、これだけは、ぜひ頑張って覚えてください!
覚えちゃうと、あとの理解が楽になりますよ。