重炭酸緩衝系
血液・体液で行われているpHを一定に保つ働き(緩衝系)のなかで、最もメジャーな働きは「重炭酸緩衝系」だということはわかりましたね。重炭酸緩衝系とは、一体何者なのでしょう?
重炭酸緩衝系とは
「重炭酸緩衝系」
名前から察するに、「重炭酸」が関係している、pHを一定に保つための働きのようですね。
「重炭酸」という言葉、どこかで聞き覚えがないですか・・・?そう、体の中で常につくられている酸、酸塩基平衡を保つための「塩基」はどれ?のページで、「重炭酸イオンHCO3−」なるものがでてきていましたね。どうやら、重炭酸緩衝系には重炭酸イオンHCO3−がカギとなっているようです。
重炭酸緩衝系における重炭酸イオンHCO3−のはたらきを理解するにあたり、実は、体の中で常につくられている酸のページに出てきた二酸化炭素が水に溶ける化学反応式、これがとっても重要だったんです!
もう一度、二酸化炭素が水に溶ける化学反応式をおさらいしましょう。
CO2(二酸化炭素) + H2O(水) ⇔ H2CO3(炭酸) ⇔ HCO3−(重炭酸イオン) + H+(水素イオン)
(解説:二酸化炭素を水に溶かすと、炭酸(シュワシュワのあれです)になり、そこから重炭酸イオンと水素イオンに分かれる。ちなみになぜこの式のやじるしは双方向⇔になっているかというと、二酸化炭素は体の中で、水素イオンになってみたり二酸化炭素になってみたり、その時の状況に応じて臨機応変に姿を変えているから。)
思い出しましたか?
Nsかなむんも含め、化学が苦手なあなた。ここで1つ、この化学反応式だけ頑張って覚えてください。この化学反応式さえわかれば、重炭酸緩衝系の働きはわかったも同然です。
この化学反応式を頭に入れたうえで、まずは「重炭酸緩衝系」の主人公、重炭酸イオンHCO3−は体の中でそんな役割を担っているのかみていきましょう。
重炭酸イオンHCO3−の役割
私たちは、pH7.35-7.45という狭ーい範囲のなかでしか元気に活動できません。しかし、無情にも酸は体の中で増え続けていきます・・・。この酸をどうにかして減らすために、体は2つの工夫をします。
一つは、どんどん体の外に酸を出していくことです。
もう一つは、酸を中和させて酸性に傾きすぎた体をpH7.35-7.45に戻すことです。
ここで、酸を中和し、pH7.35-7.45にどうにか保とうとする物質が、塩基である重炭酸イオンHCO3−です。
そしてこの重炭酸イオンHCO3−の働きこそが、緩衝作用(pHを一定に保とうとするはたらき)と呼ばれているものなのです。
水素イオンH?と重炭酸イオンHCO3?の関係
重炭酸イオンHCO3−は、どんどん増えていく酸水素イオンH+を中和させる役割をもっていることはわかりましたね。
つまり、体の中で水素イオンH+が増えれば増えるほど重炭酸イオンHCO3−も増える方向に働き、水素イオンH+が減れば重炭酸イオンHCO3−も減る方向に働いていくのです。
ここを理解していると、後々出てくる腎臓による代償機能について理解しやすくなります。
なので、このことは頭の片隅に置いておいてくださいね。
重炭酸緩衝作用のはたらき
重炭酸イオンHCO3−は、水素イオンH+を中和させ、体の中のpHを一定に保とうとする働きがあることはわかりましたね。
重炭酸緩衝作用のそのほかの働きとして、増えすぎた酸をどうにか体の外に出そう!という働きがあります。この時、余分な酸は体のどこから出ていくかといいますと、肺・腎臓です。
肺の働きは何ですか?簡単に言うと、酸素O2を取り込んで二酸化炭素CO2を排出することですね。
では腎臓の働きは何でしょう。簡単に言うと、体の中の余分なもの(ここでは水素イオンH+)を尿として排出することです。
ここで先ほどの化学反応式を思い出します。
CO2(二酸化炭素) + H2O(水) ⇔ H2CO3(炭酸) ⇔ HCO3− (重炭酸イオン) + H+(水素イオン)
つまり、いらなくなった酸(二酸化炭素CO2、水素イオンH+)を体の外に出すため、肺は二酸化炭素CO2排出を担当し、腎臓は水素イオンH+排出を担当しているのです!
ちなみに・・・
二酸化炭素CO2と水H2Oから炭酸H2CO3をつくりだす反応は時間がかかりますが、炭酸H2CO3から重炭酸イオンHCO3−と水素イオンH+をつくりだす反応は瞬時に行われます。
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