7. 酸塩基平衡における「重炭酸緩衝系」とは何か

 

 

私たち人間は、酸と塩基のバランスを一定に保たなくては生きていくことができません。酸塩基のバランスは「pH」という指数で表されますが、私たちが元気に活動できるpHの範囲というのは、動脈血ph7.35-7.45という非常に狭いものなのです。

 

酸塩基のバランスを一定に保つ働きは、体のいろいろなところで行なわれています。その中でも代表的な部位は、「血液・体液」「肺」「腎臓」です。

 

今回のテーマである「重炭酸緩衝系」は、酸塩基平衡バランスを保つための働きの一つです。

 

まずは、血液・体液における酸塩基バランスの保ち方について、基本的な内容をみていきましょう。

 

血液・体液における酸塩基平衡バランスの保ち方

 

一口に「血液・体液で酸塩基バランスが保たれている」とはいっても、その場所は大きく分けて4つあります。以下に、それぞれの名称と占める割合について記載します。

 

 

・重炭酸緩衝系(約65%)

 

・ヘモグロビン緩衝系(約30%)

 

・血漿タンパク質系(約7%)

 

・リン酸緩衝系(約5%)

 

 

7. 酸塩基平衡における「重炭酸緩衝系」とは何か

 

このグラフを見ていただければ分かるように、血液・体液における酸塩基平衡の調整で最も比重の大きいものは「重炭酸緩衝系」と呼ばれている働きです。

 

それでは、今回のテーマである「重炭酸緩衝系」とは一体何者なのかみていきましょう。

 

重炭酸緩衝系とは

 

「重炭酸緩衝系」といきなり言われても、ピンとこない人が多いと思います。

 

重炭酸緩衝系は、簡単に言うと、「重炭酸」が関係しているpHを一定に保つための働きのことです。

 

「重炭酸」という言葉は、なんとなく聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。実は「重炭酸」こそが、体の酸塩基バランスを一定に保つために重要な物質なのです。

 

酸塩基平衡における塩基は、重炭酸イオンHCO3−のことである

 

「重炭酸」について理解する前に、まずは「酸」と「塩基」について確認していきます。酸塩基平衡における酸と塩基の定義は以下の通りです。

 

酸と塩基の定義

 

酸 : 水素イオンH+を放出する物質

 

塩基 : 水素イオンH+を受け取る物質

 

7. 酸塩基平衡における「重炭酸緩衝系」とは何か

 

7. 酸塩基平衡における「重炭酸緩衝系」とは何か

 

そして、人間の体の中では、常に「酸」が作られています。一言で酸と言っても、酸は以下の2種類に分けることができます。

 

【揮発性の酸】

 

二酸化炭素(CO2)

 

【不揮発性の酸】

 

硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)

 

何もしなければ、酸は体の中にどんどん溜まっていきます。すると、体は酸性に傾いてしまい、私たちの体には異変が起きてしまいます。

 

増えすぎた酸を押さえる働きとして活躍するのが、重炭酸イオンであるHCO3−です。

 

ここで、一つ紹介しておきたい化学反応式があります。これから紹介する化学反応式は、酸と塩基の働きを理解するのを助けてくれるものです。酸塩基平衡は奥深いため、もちろんこの方程式だけでは説明できません。ですが、酸塩基平衡について理解する取っかかりとしては分かりやすいため、紹介します。

 

7. 酸塩基平衡における「重炭酸緩衝系」とは何か

 

いきなりこのような化学方程式を見せられても「?」と思う方も多いでしょう。

 

先ほどの酸と塩基の定義を思い出してください。酸とは水素イオンH+を放出する物質であり、塩基とは水素イオンH+を受け取る物質のことでしたね。

 

それを思い出した上でこの方程式を見ると、方程式の右側に「重炭酸イオン(HCO3−) +水素イオン(H+)」という表記を見つけられると思います。これを見れば分かるように、重炭酸イオンHCO3−は水素イオンH+を受け取っています。

 

つまり、酸塩基平衡における塩基とは、水素イオンH+を受け取っている重炭酸イオンHCO3−のことなのです。

 

この化学反応式を頭の片隅に置いたうえで、「重炭酸緩衝系」の主人公である重炭酸イオンHCO3−が、体の中でどんな役割を担っているのかみていきましょう。

 

重炭酸イオンHCO3−の役割

 

私たちは、pH7.35-7.45という狭い範囲のなかでしか元気に活動できません。しかし先述した通り、何もしなければ、酸は体の中で増え続けていきます。この酸をどうにかして減らすために、体は2つの工夫をします。

 

それが、以下の2つです。

 

@ 酸を中和させて酸性に傾きすぎた体をpH7.35-7.45に戻すこと

 

A 体の外にどんどん酸を出していくこと

 

塩基である重炭酸イオンHCO3−は、このどちらの働きにも関わっているのです。そしてこの重炭酸イオンHCO3−の働きこそが、緩衝作用(pHを一定に保とうとするはたらき)と呼ばれているものなのです。

 

それでは、@とAそれぞれの重炭酸イオンの働きについてみていきましょう。

 

@ 酸を中和させる働き

 

塩基である重炭酸イオンHCO3−は、どんどん増えていく酸である「水素イオンH+」を中和させる役割をもっています。このことは、先述した化学方程式を見ると理解しやすいです。

 

7. 酸塩基平衡における「重炭酸緩衝系」とは何か

 

この式を見ていただければ分かるように、塩基である重炭酸イオンHCO3−は、酸であるH+と結びつき、中和しています。

 

そして、体の中で水素イオンH+が増えれば増えるほど重炭酸イオンHCO3−も増える方向に働き、水素イオンH+が減れば重炭酸イオンHCO3−も減る方向に働いていくのです。

 

このように、重炭酸イオンHCO3−はバランスを保ちながら、酸が増えすぎないように中和させる働きをしています。

 

それでは次に、重炭酸イオンの2つ目の働きについてみていきましょう。

 

A 体の外に酸を出していく働き

 

重炭酸緩衝作用のそのほかの働きとして、増えすぎた酸をどうにか体の外に出そう!という働きがあります。この時、余分な酸は体のどこから出ていくかといいますと、肺・腎臓です。

 

肺の働きは、酸素O2を取り込んで二酸化炭素CO2を排出することです。

 

では腎臓の働きは何でしょう。簡単に言うと、体の中の余分なもの(ここでは水素イオンH+)を尿として排出することです。

 

ここで先ほどの化学反応式を思い出しましょう。

 

7. 酸塩基平衡における「重炭酸緩衝系」とは何か

 

つまり、いらなくなった酸(二酸化炭素CO2、水素イオンH+)を体の外に出すため、肺は二酸化炭素CO2排出を担当し、腎臓は水素イオンH+排出を担当しているのです。

 

それでは最後に、今回のポイントを振り返りましょう。

 

【ポイント】

 

・重炭酸緩衝系とは、重炭酸イオンHCO3−が活躍して酸塩基バランスを保つ働きのこと。

 

・重炭酸イオンHCO3−は、

 

@ 酸を中和させて酸性に傾きすぎた体をpH7.35-7.45に戻す

 

A 体の外にどんどん酸を出していく

 

という2つの働きをもっている

 

 

酸塩基のバランスを保つために、重炭酸イオンHCO3−は重要な役割を担っているということを覚えておきましょう。

 

 

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