呼吸性アルカローシス
病態
呼吸性アルカローシスは、二酸化炭素のはけ過ぎが原因で、体の中がアルカリ性に傾いてしまった状態のことをいいます。
機序
呼吸性アルカローシスが起きると、体の中ではこのような化学反応式がすすんでいきます。
CO2(二酸化炭素) + H2O(水) ← H2CO3(炭酸) ← HCO3−(重炭酸イオン) + H+(水素イオン)
矢印の方向は、左←です。
急性の呼吸性アルカローシスの代表的な疾患は、過換気症候群です。過換気症候群では二酸化炭素がはけ過ぎてしまうので、血液ガスを取ってみると、二酸化炭素の量を示す二酸化炭素分圧PaCO2が減少しているのがわかります。
呼吸性アルカローシスを引き起こす疾患
@呼吸中枢(延髄)に障害が起きた場合
呼吸中枢に障害がおきると、呼吸のリズムがくるって換気が促進され、二酸化炭素がはけ過ぎてしまうことがあります。
原因は、脳圧亢進、代謝性脳症、頭蓋内出血などです。
A細胞レベルで低酸素状態になった場合
敗血症やショックなどがおきると、循環がうまくいかなくなり、細胞レベルで低酸素状態が起きます。
低酸素状態とはすなわち、細胞の中の酸素が少ない状態=二酸化炭素が溜まっている状態であるため、細胞の中は二酸化炭素という酸が溜まった、アシドーシスの状態になっています。
それを是正するために、溜まっている二酸化炭素をはけさせようと、アルカローシスになります。
B心因性
いわゆる過換気症候群の病態です。緊張や興奮、恐怖などによりハカハカと換気量が増えてしまい、体の中に二酸化炭素が溜まってしまいます。
○その他
人工呼吸器の設定が不適切である場合にも、CO2がはけ過ぎてしまうことがあります。
血液検査データ
正常値
PaO2(酸素分圧):80〜100 mmHg
PaCO2(二酸化炭素分圧):35〜45 mmHg
pH: 7.35〜7.45
HCO3−:22〜26 mEq/L
呼吸性アルカローシスでは、血液ガスの結果は以下のようになります。
○PaCO2<35mmHg(二酸化炭素がはけ過ぎてしまうため、二酸化炭素の量を示す二酸化炭素分圧PaCO2が減少します)
○pH>7.45(酸である二酸化炭素が体からはけすぎてしまう、体はアルカリ性になります。)
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