医療の現状や歴史から看護師のキャリアアップを学ぶ

 

医療は凄まじいスピードで日々進化を続けています。その中で、看護師に求められる役割もどんどん大きくなり、看護師の専門性も増してきています。

 

看護師として臨床で看護を実践していく中で、キャリアアップしたいと思う人は多いと思います。

 

しかし、キャリアアップしたいからといってただやみくもに資格をとる前に、考えてほしいことがあります。それは、今の医療の現状や問題点です。せっかくキャリアアップを目指すのであれば、今の医療が抱える問題点をしっかりと認識した上で、幅広い知見を持ったスペシャリストとしての看護師になっていただきたいと思います。

 

このページでは、医療の現状や問題点について簡潔にまとめてあります。医療を行う上で何が問題になるのかを把握し、問題点を解決するためにどのような方向性で看護の専門性を高めていくか自ら考え、実践していきましょう。

 

医療・看護の歴史

 

医療の現状について知る前に、まずは歴史についてみていきます。

 

あなたは、日本の歴史の中で「病院」という施設ができたのはいつ頃だかご存知ですか?

 

今でこそ私たちの生活になくてはならない病院ですが、実は病院という施設ができたのは明治時代(1850年頃)です。つまり、何千年という長い日本の歴史の中において、病院ができたのは明治からの話なのです。

 

それでは「看護師」という職業はいつできたのか。世界で初めて看護師の役割を明確にしたのは、ナイチンゲールです。ナイチンゲールは1860年に書いた有名な書物「看護覚え書き」のなかで、看護についての定義を明らかにしました。

 

日本で「看護師」という資格が誕生したのは、ナイチンゲールの時代から少し遅れた1915年です。このときにはじめて看護師の役割が定められました。

 

つまり、今でこそ看護師という仕事はわたしたちの生活に不可欠のものとなっていますが、看護師という仕事は誕生してからたったの100年ほどしか経っていないのです。

 

ここ100年の間で医療は圧倒的な進化を遂げました。具体的にどのような進化を遂げたのか、そしてそれによってどのような問題点が生まれたのか。確認していきましょう。

 

 

医療の現状と問題点

 

それでは医療の現状について、それぞれ述べていきます。

 

<医療の高度・複雑化>

 

医療の現場では新しい検査や治療法がどんどん開発されています。このことで、「今まで治らなかった病気が治るようになる」「長生きできるようになる」など、わたしたちは多くの恩恵を受けることができるようになりました。

 

しかし、いいことばかりではありません。高度な技術が臨床で実践されるにつれて、今までなかった新しい問題にも直面するようになりました。

 

例えば、生命倫理の問題が挙げられます。医療の現場では「脳死」「臓器移植」「延命措置」など、非常に繊細で難しい問題にも対応していく必要がでてきました。

 

また、高度な技術が用いられるにつれて、それを扱う人たちのミスも増えてきます(これをヒューマンエラーと呼びます)。このようなヒューマンエラーに対して対策を立てていく必要もでてきました。

 

<インフォームドコンセントの普及>

 

それだけではありません。一昔前まで医師の意見は絶対的なもので、患者はただそれに従うだけでした。患者は自分ではほとんど決定権をもたず、医師にすべてをゆだねた「おまかせ医療」だったのです。

 

しかし、今は違います。

 

まず、医師には情報開示の義務が定められました。そのため、患者が求めたらカルテ情報はすべて見せなくてはいけません。ほかには、1つの病院だけでなくほかの病院にも意見を求める「セカンドオピニオン」も積極的に行われるようになり、医師はほかの病院にもきちんと紹介する義務がでてきました。

 

また、「手術」「治療」「検査」「処置」などは、すべて患者さんの同意を得てからでないと行うことができなくなりました。しかも、口頭での同意ではなく同意書にサインをしてもらう必要があります。

 

このことは、患者さんが自分のことを自分で決定できるという大きなメリットや、安心感があります。しかし、医師と患者では圧倒的な知識の差があります。そのため、患者がきちんと説明を理解できているか、納得できているか、丁寧に確認していく必要があるのです。

 

<医療への期待の高まり>

 

さらに今は、テレビやインターネットなどで手軽に情報を得ることができる時代です。一般の人でも専門的な知識をもつことが可能になりました。

 

しかし、テレビやインターネットの情報には不確かなものも多いです。根拠の乏しい情報や大げさな広告などにより、患者は過度の期待を寄せてしまう場合があります。

 

また、病院であればどこでもよいという時代は終わり、病院にも質の高さが求められるようになりました。そのため、第三者による病院評価や、患者満足度などの指標も重視されるようになってきています。

 

<医療の場の変革〜チーム医療〜>

 

そうした医療の高度化や患者満足度に対応するため、チーム医療が行われています。以前の医療の場は、医師を頂点としたピラミッド構造のようになっていました。つまり、医師の意見は絶対であり、患者を含め、看護師やその他の職種は医師の意見に依存していたのです。

 

 

しかし今は、患者を中心としてさまざまな職種が専門性を発揮しながら、対等にディスカッションを行うことが求められるようになりました。看護師も、「看護」という専門領域における責任をもち、プロフェッショナルとして専門性を発揮していくことが求められるようになったのです。

 

このように、医療の現場は高度・複雑化しています。そしてそれと同時に、看護職への期待も高まっているのが現状です。
これからの看護師は、「看護」という専門領域において、今までよりももっと権限や発言力を持っていく必要があります。そのためには、看護の専門性をより充実させなくてはいけません。

 

看護の専門性を充実させるには「臨床実践能力の向上」「看護教育のレベルアップ」「臨床に出た後の継続教育の充実」「看護の学問的発展」など、さまざまなアプローチ方法があります。

 

看護師としてキャリアアップすることは、自分一人のスキルを上げるだけでなく、看護職がよりプロフェッショナルになるために貢献することでもあるのです。



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