看護師の働き先である病院・診療所の分類と違い

 

例外もありますが、看護師として働く場所は多くの場合「病院」です。しかし、病院と一口に言っても大学病院から町の診療所まで、いろいろな種類の病院があります。

 

ここでは、病院の種類についてみていくことで、自分はどのような病院で働きたいかイメージを膨らませていきましょう。

 

病院と診療所の違いは病床数(ベッドの数)である

 

まず、一般的に病気の人を治すための施設は、病床数(ベッドの数)に応じて2つに分けて考えることができます。それは「病院」「診療所(クリニック)」です。
「病院」は病床数が20以上ある大きな施設のことです。一方の「診療所(クリニック)」は、病床数が19以下の小さな施設のことを指します。

 

病床(ベッド)の使用目的による病院の分類

 

病床(ベッド)は、その使用目的により「一般病床」「感染症病床」「結核病床」「精神病床」「療養病床」の5つに分類されます。

 

ほとんどが一般病床を占めている「一般病院」、感染症病床が100%の「感染症病院」、結核病床が80%以上の「結核病院」、精神病床が80%以上の「精神病院」、そして「療養病床」です。

 

それぞれの分類ごとに人員配置基準や設備配置基準が異なります。

 

例えば、一般病床は、以下のような人員配置になります。

医師:(入院患者)16人につき1人

 

看護師・准看護師:(入院患者)3人につき1人

 

薬剤師:(入院患者)70人につき1人

また、手術室、診察室、臨床検査施設、処置室、エックス線装置、調剤室を備えていることが必要など、設備面でも決まりがあります。

 

 

一方で療養病床では、以下のような人員配置になります。

医師:(入院患者)48人につき1人

 

看護師・准看護師:6人につき1人

 

薬剤師:150人につき1人

機能訓練室、浴室、談話室、食堂等の設備を備えていることが必要です。

 

このように、一口に病床といっても使用目的によって必要とされる人員配置や設備が異なります。そのため、病院設置主体は、病床の使用目的によって人員配置や設備を変えていかなくてはいけません。

 

病院のもつ役割別の分類

病院の中には、特定の役割を持った病院というものが存在します。それは、「特定機能病院」「地域医療支援病院」の2つです。

 

それぞれの特徴をみていきましょう。

 

<特定機能病院>

 

特定機能病院は、その名の通り特定の機能を持った病院のことです。「特定の機能」とは簡単に言うと「高度な医療」を指しています。

 

特定機能病院は、高度な医療の提供、高度な医療の開発、高度な医療の研修を行う、まさに日本の医療の最先端をいく病院のことを指しています。もし特定機能病院という承認をもらうことができたならば、その病院は高度な医療を行う病院であるという証明を手にすることができます。

 

しかし、特定機能病院になるための条件は一般病院に比べると厳しいものとなっています。例えば「病床数は400床以上必要」「医師は通常の病院の2倍程度配置すること」などが求められます。

 

<地域医療支援病院>

 

地域医療支援病院とは、地域医療の中核を担う病院のことです。

 

病気になったとき、いきなり大病院を受診する人はあまりいません。まずはかかりつけ医のもとへ受診します。しかし、このときかかりつけ医で対応できない異常が発見されたとします。そのときに出てくるのが、地域医療支援病院です。

 

地域医療支援病院は、「かかりつけ医を支援」「救急医療の提供」「地域の医療従事者に対する研修の実施」などを行い、地域の医療を支える役割を担っています。

 

このように、病院を「特定の役割をもっている病院」という視点から分類した場合に、「特定機能病院」と「地域医療支援病院」の2つに分けて考えることができます。

 

総合病院、大学病院、専門病院の違い

一般的によく使われている名称に「総合病院」「大学病院」「専門病院」があります。それぞれどのように違うのか、説明していきます。

 

<総合病院>

 

よく使われる「総合病院」という名称ですが、実は現在、総合病院に明確な定義はありません。しかし平成9年までは、医療法で総合病院について明記されていました。そのときの総合病院は「病床数100以上の一般病院で、診療科は最低でも内科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科の5診療科をもつ」などと定義されていました。

 

繰り返しますが、現在では総合病院の定義はありません。今では総合病院という名称は、「さまざまな種類の診療科があり入院施設をもつ病院」のような概念的な使われ方をされています。

 

<大学病院>

 

大学病院は、大学に併設されている病院のことです。「○○大学附属病院」と大学名がついているような病院は、ほとんどが大学病院です。

 

大学病院には、ほかの病院と異なる特徴があります。それは、ほかの病院があくまで「診療」が中心なのに対し、大学病院は「診療」に加えて「臨床教育」「臨床研究」という役割もあることです。

 

臨床教育を目的としているため、研修医や看護学生・新人看護師の受け入れも多く、教育病院としての側面も強いです。患者側からしたら不都合に思うことも多いかもしれませんが、大学病院は臨床研究も役割としてあるため、最新の医療を提供できるというメリットもあります。

 

大学病院の中には、特定機能病院に指定されている病院も多くあります。

 

<専門病院>

 

専門病院は、がんセンター、子ども病院、産婦人科医院、脳神経外科病院など、特定の病気、対象、臓器に特化した病院のことです。

 

専門病院は、さまざまな症例の患者さんが集まってきます。そのため、自分の興味のある領域が決まっている人にとっては、多くの症例を経験できる病院となります。一方、扱う分野がかなり限定されているため、応用が利きにくいというデメリットもあります。

 

病院には、このように種類があります。「病院」と「診療所」によってその形態は異なりますし、いわゆる病院であってもさまざまな種類があります。看護師として働く以上は、これらの違いを知った上で就職先・転職先を探さなければいけません。



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