専門看護師の役割と認定看護師との違い

 

看護師がキャリアアップを目指す方法はたくさんありますが、特定の領域のスペシャリストになることができる資格に「認定看護師」「専門看護師」があります。どちらも、取得することで自分自身の能力を向上させるだけでなく、看護、ひいては医療全体の発展に寄与することのできる資格です。

 

ここでは、専門看護師の役割についてみていきましょう。

 

専門看護師の役割

 

専門看護師は、日本看護協会が認定している資格です。看護師という国家資格を持っている人が、所定の条件を満たしたうえで審査に合格すると、取得することができます。

 

専門看護師は英語で「Certified Nurse Specialist」と表記され、「CNS」と略されます。

 

専門看護師に期待される役割は、大きく6つあります。「実践」「相談」「調整」「倫理調整」「教育」「研究」です。

 

「認定看護師」にも、実践や相談などの役割があります。しかし認定看護師と専門看護師では大きく異なる点が2つあります。1つは、専門看護師の方が、他職種にも積極的にかかわる働きをすることが求められるということです。「調整」などがそれに当たります。

 

そしてもう1つは、「教育」「研究」など、自分の能力の向上にとどまらず看護、そして医療全体の発展に寄与することができるという特徴があります。

 

それでは、専門看護師の役割を詳しく確認していきましょう。

 

<個人、家族および集団に対して卓越した看護を実践する(実践)>

 

専門看護師は、特定の分野に精通したスペシャリストです。そのため、卓越した知識・技術をもち、発展的な看護を実践していきます。

 

私が小児科病棟で働いていたとき、先輩に小児看護専門看護師がいました。実際にその小児看護専門看護師は、幅広い視野と豊富な知識を持っていました。そして患者、家族のニーズを拾い出して個別性の高いケアを提供しており、患者や家族はもちろんスタッフからも絶大な信頼を集めていました。

 

さらには、受け持ち業務のみならず、病棟全体で必要だと思われるプログラムを積極的に作り出していました。例えば、子どもは痛いときに大人のようにうまく表現することができません。

 

そこで、「子どもが痛みを感じたときの反応を客観的に観察するスケール」「子どもの痛みに関する親への質問票」を導入したり、「鎮痛薬の選択方法や正しい使用法」の教育を行ったりするなど新しい取り組みを始め、それにより痛みに苦しむ子どもに対して大きな効果を発揮できるようになりました。

 

<看護者を含むケア提供者にコンサルテーションを行う(相談)>

 

専門看護師が行うコンサルテーションは、部署内だけにとどまりません。ときには、専門分野のチームを医師、薬剤師などとともに結成し(例:緩和ケアチームなど)、チームで病院全体を回診しながらコンサルテーション(相談・協議)を行います。

 

また、コンサルテーションを行う際には、経験則だけで発言するのでなく、きちんと根拠を示しながら的確な情報提供を行います。

 

<保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う(調整)>

 

コーディネーションとは、調整という意味です。専門看護師は、円滑な医療が行われるために、看護師間はもちろんのこと他職種、他部署をつなぐ調整役を担っています。

 

チーム医療の実践のために、自ら率先して働きます。

 

<倫理的な問題や葛藤の解決をはかる(倫理調整)>

 

医療が高度・複雑化していくにつれて、倫理的問題に直面する場面が増えてきています。

 

臨床で「これは患者さん、家族にとって本当にいいことなのか」と気づいたら、それを顕在化させ、倫理的ジレンマの解決へと取り組んでいくことも専門看護師の役割になります。

 

専門看護師は、患者の代弁者として、患者が納得のいく意思決定ができるようサポートすることも大切な仕事です。

 

<看護者への教育的役割を果たす(教育)>

 

専門看護師が行う教育的役割には、部署内の勉強会はもちろん、院内教育プログラムの企画・運営を行ったり、大学などの研究機関との連携を図ったりすることもあげられます。

 

それだけではありません。専門分野のスペシャリストとして、講演や執筆活動をおこなっていくこともあるのです。

 

<専門知識及び技術の向上並びに開発をはかるために実践の場における研究活動を行う(研究)

 

例えば、先述した子どもの痛みに関する取り組みは、学会で発表されました。このように、先進的な取り組みは院内だけにとどまらず、専門分野に関わる全ての人と共有できるようになります。

 

研究や発表を行うことで、専門看護師は日本の看護をリードしていく存在となるのです。

 

専門看護師になるには

 

専門分野のスペシャリスト、さらには看護界全体をリードしていく存在である専門看護師になるためには、通算5年以上(そのうち3年以上は専門分野)の実務経験が必要です。

 

ここまでは認定看護師と一緒ですが、このあとの流れが少し異なります。それは、大学院に「進学する必要がある」という点です。

 

それでは、以下の表で詳しくみていきましょう。

 

専門看護師の役割とやりがい

 

専門看護師も認定看護師と同じように、5年ごとに更新しなくてはいけない資格であるという点に注意しましょう。

 

専門看護分野

 

分野としては、「がん看護」「精神看護」「地域看護」「老人看護」「小児看護」「母性看護」「慢性疾患看護」「急性・重症疾患看護」などがあります。

 

専門看護分野に関しては、必要であれば新しい分野が創出されます。現在認められている専門看護分野の一覧は日本看護協会のホームページに記載されていますので、確認してください。

 

このように、専門看護師に求められる役割は多岐にわたっています。その役割のどれをとっても患者や家族にとって大きな恩恵をもたらしてくれるものです。さらに、将来の看護・医療界の発展のためにも非常に大きな力になります。

 

専門看護師は、看護師として専門分野でキャリアアップを望む方にとっては、大きなやりがいをもちながら専門性を存分に発揮できる資格です。そうして医療の現場でパイオニア的な存在になることで、医療全体を引き上げるという重要な使命を担っているのです。



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