ロタウイルスの治療〜胃腸炎治療〜

 

ロタウイルスには、残念ながら特効薬はありません。
そのため、治療の基本は対処療法になります。

 

脱水予防

・経口補水療法(ORT:oral rehydration therapy)
家庭でもできる脱水予防は、経口補水療法です。経口補水療法と聞くとなんだかややこしそうにも感じますが、言ってしまえばちゃんと水分を取らせましょう!ということです。

 

元気な時、便からの水分喪失量は5ml/kg日程度です。しかし、激しい下痢の時には200ml/kg/日もの水分が失われてしまうのです!元気な時と比べて、便からの水分喪失量はおよそ40倍!しかも高熱がでていたり、嘔吐していたりすると、さらにそこからも水分が失われてしまいます。積極的に水分を取らせなければ、あっという間に脱水になってしまうのです。

 

下痢が始まったら、できるだけ水ではなく、経口補水液(ORS:oral rehydration solution)と呼ばれる腸管での水分・電解質吸収に優れた飲料を飲ませましょう。一般的にドラッグストアなどで売られている商品名でいうと、OS−1(大塚製薬工場)、アクアライトORS(和光堂)、アクアライト(和光堂)、ポカリスエット(大塚製薬)などがあります。

 

嘔吐がみられるときには、1回5ml程度(一口)のごく少量から与えて様子を見ます。吐いたりせずに摂取できている場合は、体重10kg未満の乳幼児で下痢・嘔吐の都度ORS 60〜120ml、体重10kg以上の乳幼児で下痢・嘔吐の都度ORS 120〜240mlを目標に水分を与えます。

 

・・・とはいっても、子どもに水分を取らせるのってとても大変ですよね。元気な時にでさえ大変なのに、下痢に嘔吐にぐったりな子どもに水分を取らせるなんて、至難の業です。
ここで、Nsかなむんが、子どもに水分を取らせるコツをお伝えします。それは、ちょこちょこ頻回に飲ませるということです。一度にたくさん飲ませようとしても、なかなか飲んでくれません。そのため、飲み物の入ったマグを常に常備しておき、一口、ちょっとしたら一口・・・と、とにかく頻回に飲ませまくるのです!
詳細は「ロタウイルスの看護」に書いてあるので、ご確認ください。

 

・経静脈輸液療法(IVT:intravenous fluid replacement therapy)
脱水予防の第一選択は、経口補水療法(ORT)です。しかし脱水の程度が重かったり、全身状態が悪い場合などには、経静脈輸液療法(IVT)が用いられます。

 

<軽症〜中等症の脱水の場合>
脱水の程度が軽症〜中等症の患者さんに対して補液を行う場合には、症状発現後3〜4時間以内に総量50〜100ml/kgのORSを投与します。

 

<重症の脱水の場合>
重症の脱水の場合の輸液療法には、大きく分けて2種類あります。
一つは、急性期に行う、循環血液量回復が目的の”急速初期輸液”
そしてもう一つは、回復期に行う”緩速均等輸液”です。

 

”急速初期輸液”では、「細胞外液輸液」と呼ばれる血清の電解質組成に近い補液が用いられます。よく使われるのは、生理食塩水や乳酸リンゲル液などです。これらを、20ml/kgの速度で投与します。いつまで投与するかというと、末梢循環不全徴候が消失するまでです(例えば、尿が2回出ることを確認できた等)。末梢循環不全徴候の消失を確認するには、通常4時間前後かかります。

 

末梢循環不全徴候の消失を確認したら、”緩速均等輸液”に移ります。緩速均等輸液では、「均衡多電解質輸液」と呼ばれる輸液が使われます。ソリタT3号、ソルデム3Aなどがあります。ORS 100ml/kgを4時間で投与し、その後は下痢や嘔吐がみられるたびに、その分の水分量(前述)を補給していきます。

 

薬物療法

胃腸炎の薬物療法としては、整腸剤(乳酸菌、ビフィズス製剤など)が用いられます。薬物療法とはいっても基本的に使われる薬が乳酸菌やビフィズス製剤なので、非常にマイルドな治療といってよいでしょう。

 

抗菌薬は、消化器症状を悪化させることが多いため、基本的には使いません。しかし、重感染(ウイルスと細菌または真菌感染)のときには用いられます。また、免疫不全の患者さんが長期間にわたってウイルスを排出しているような場合にも用いられます。


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