ロタウイルスの疫学
胃腸炎の原因となるウイルスはいくつか種類があります。有名なものでいうと、毎年流行する「ノロウイルス」がありますね。ノロウイルスは、私たち大人にも身近な胃腸炎であるためご存知の方は多いかと思います。
それでは、「ロタウイルス」って聞いたことはありますか?もしかしたらなじみが薄い方が多いかもしれません。その理由は、ロタウイルスは感染する月齢に特徴があるからなんです。
赤ちゃんの天敵!ロタウイルス
多くの子どもが、5歳までに1度は感染するといわれています。その中でもロタウイルスを発症しやすいのは、乳幼児期。特に1歳の赤ちゃんです。1歳をピークに、その後発症する数は減っていきます。
1歳の赤ちゃんの天敵である、ロタウイルス。でも、赤ちゃんにとってロタウイルスが脅威となる理由は、もう一つあります。それは、初感染の場合、重症化しやすいという特徴があるからです。ただでさえ感染に弱く、体力もない赤ちゃん。重症化してしまうと、適切な対応をしないと命にかかわってしまう場合もあります。
ちなみに、新生児はお母さんからの免疫により、感染したとしても不顕性感染(感染したにもかかわらず症状が出ないこと)で終わることが多いです。
また、年長児や大人も、感染したとしても不顕性感染でおわることが多いです。その理由は、もうすでにロタウイルスの免疫を持っているからです。
生涯何度も感染する、ロタウイルス
ロタウイルスは、1度感染して免疫ができたからもうならない!・・・といったウイルスではありません。ロタウイルスには多くの型があるため、感染したことのある型と違う型に感染してしまった場合は、また胃腸炎の症状が現れてしまうことがあるのです。しかし、重症化するリスクが高いのは初回感染で、2回目の感染からは重症化するリスクは減ります。
ロタウイルスは、いつ流行る?
ロタウイルスの流行のピークは、3月〜5月です。つまり、冬の終わりごろから春先にかけて、流行のピークがやってきます。ちなみに、ノロウイルスの流行のピークは11月〜1月の、冬の始まりです。ノロウイルスの感染が落ち着いてきたころに始まるのが、ロタウイルスなのです。やっかいですね。
最後ですが・・・ロタウイルスとはどんなウイルス?
「疫学」最後の項目になってしまいましたが、ここでロタウイルスって一体どんなウイルスなのか、ご説明したいと思います。
ロタウイルスは、「レオウイルス科ロタウイルス」に分類されるウイルスです。「ロタ」とはラテン度で車輪という意味があり、言葉通り車輪のような形をしています。大きさは、ノロウイルスの倍くらいあり、直径約75nm(ナノメートル)です。
ロタウイルスの特徴は、なんといっても便中に含まれるウイルスの量が半端なく多いこと!患者さんの下痢便1g中に、1000億〜1兆個ものロタウイルスがいるのです!たった1gの中にですよ?衝撃的な量の多さです。
しかも、ヒトに感染させるためにはたったの10〜100個のウイルス量でよいのです。
そのうえ、ロタウイルスの感染様式は、接触感染(患者さんの便や吐物を触り、それが体内に入ることによっておこる感染)のほかに、空気感染(患者さんの便や吐物が乾いて空気中に舞い上がり、それを吸い込んだことによる感染)もあるんです。
つまり・・・1g中に1000億〜1兆個ふくまれているウイルスのうち、たった10個くらいを吸い込んだだけで、感染してしまうということになります。これはもう、感染しないほうが難しいくらいです。
ロタウイルス、恐るべし。